腎機能が正常でも、ICUではCFPMを投与した患者の15%が脳症を発症することがある。 journal.jspn.or(https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=122&year=2020&mag=0&number=1&start=3)
セフェピムの略語は「CFPM」です。 これは英語の一般名 cefepime(セフェピム)の頭文字とアルファベットを組み合わせた略称で、日本化学療法学会の「抗微生物薬略語一覧表」にも正式に収載されています。 antibiotic-books(http://www.antibiotic-books.jp/drugs/23)
臨床現場ではカルテ記載、処方指示、看護記録など、あらゆる場面でCFPMという略語が飛び交います。つまり「CFPM=セフェピム」だけ覚えておけばOKです。
類似した略語として第3世代のCAZ(セフタジジム)やCTRX(セフトリアキソン)があり、混同しやすいポイントです。 セフェム系全体の略語体系を表にまとめます。 hospinfo.tokyo-med.ac(https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/kansen/data/luncheon_2020_04.pdf)
| 世代 | 略語 | 一般名 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 第1世代 | CEZ | セファゾリン | グラム陽性球菌に強い |
| 第2世代 | CTM | セフォチアム | グラム陰性菌カバー拡大 |
| 2.5世代 | CMZ | セフメタゾール | 嫌気性菌カバー |
| 第3世代 | CTRX | セフトリアキソン | 長時間作用型 |
| 3.5世代 | CAZ | セフタジジム | 緑膿菌カバー |
| 第4世代 | CFPM | セフェピム | 広域+緑膿菌カバー |
世代が上がるほど略語がCで始まるという法則性があります。これは使えそうです。
CFPMは第4世代セファロスポリン系抗菌薬で、静注製剤として使用されます。 グラム陽性菌・グラム陰性菌の両方をカバーし、さらに緑膿菌にも有効という「広域抗菌スペクトル」が最大の特徴です。 informa.medilink-study(https://informa.medilink-study.com/web-informa/post32361.html/)
どういうことでしょうか? 例えば第3世代のCAZ(セフタジジム)も緑膿菌をカバーしますが、CFPMはCAZよりもグラム陽性菌への抗菌活性が強く、両方まとめてカバーできる点で上位互換に近い存在です。
投与経路は静注のみで、一般感染症では1回1gを12時間ごと、重症・難治性感染症や発熱性好中球減少症では1回2gを12時間ごとに投与します。 腎機能によって投与量が大きく変わります。これが重要なポイントです。 kegg(https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00058732)
作用機序はβラクタム系共通のPBP(ペニシリン結合タンパク)への結合による細胞壁合成阻害です。 セフェム系の中でも特にβラクタマーゼ安定性が高く、ESBLには対応しない一方でAmpCβラクタマーゼに安定という特性があります。 kegg(https://www.kegg.jp/entry/dr_ja:D02376)
CFPMは85%が腎臓から排泄される薬剤です。 腎機能が低下すると半減期が通常の約2時間から最大13時間以上に延び、血中濃度が著しく上昇します。腎機能別の用量調節が原則です。 igakukotohajime(https://igakukotohajime.com/2019/12/20/%E3%82%BB%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%94%E3%83%A0%E8%84%B3%E7%97%87-cefepime-induced-encephalopathy/)
| クレアチニンクリアランス(mL/min) | 一般感染症 | 重症感染症 | 投与間隔 |
|---|---|---|---|
| >50 | 1g | 2g | 12時間ごと |
| 30〜50 | 0.5g | 1g | 12時間ごと |
| 10〜30 | 0.5g | 0.5g | 12時間ごと |
| <10 | 0.5g | 0.5g | 24時間ごと |
| 血液透析 | 0.5g | 0.5g | 24時間ごと(透析後) |
血液透析ではセフェピム血中総量の約68%が3時間の透析で除去されます。 このため透析日は透析終了後に投与するのが基本です。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/topics/2012/03/dl/kigyoukenkai-119.pdf)
腎機能での調節をしないことが、CFPM脳症の発症に強く関連するとMayo Clinicの研究で指摘されています。 「腎機能が少し悪い程度だから大丈夫」という判断が、意識障害を招く可能性があります。厳しいところですね。 igakukotohajime(https://igakukotohajime.com/2019/12/20/%E3%82%BB%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%94%E3%83%A0%E8%84%B3%E7%97%87-cefepime-induced-encephalopathy/)
電子カルテ上でCFPMを入力する際、腎機能のアラートが出なくても、担当医・薬剤師が自ら確認する習慣が重要です。腎機能確認を1アクションで行えるシステムや、薬剤師との協働によるTDM(薬物血中濃度モニタリング)を活用する体制を整えることが現場では有効です。
CFPMには「脳症」という重大な副作用が存在します。 これはCFPMがGABAA受容体を阻害することで神経症状を引き起こすメカニズムによるものです。 hospi.sakura.ne(http://hospi.sakura.ne.jp/wp/wp-content/themes/generalist/img/medical/jhn-cq-kameda-200720.pdf)
ICUでCFPMを3日以上投与された患者の15%がCFPM脳症を発症したという報告があります。 100人投与すれば15人が脳症を経験しうる頻度です。決して稀な副作用ではありません。 journal.jspn.or(https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=122&year=2020&mag=0&number=1&start=3)
症状の内訳はこうです。
e-doctor-blog(https://e-doctor-blog.com/archives/330)
投与開始から神経症状出現までの中央値は4〜5日です。 この時間経過が「他の原因の意識障害」と区別する重要な手がかりです。 e-doctor-blog(https://e-doctor-blog.com/archives/330)
特に問題なのは「心因性と勘違いされやすい意識障害」「診察拒否・拒薬」といった症状です。 精神科的な問題と誤診され、CFPM継続のまま悪化するケースが報告されています。意外ですね。 arcmedium.co(https://arcmedium.co.jp/products/detail.php?product_id=2736)
CFPMを中止すれば、神経症状は中央値2日(IQR 1〜3日)で改善します。 疑ったら中止、これが基本です。 e-doctor-blog(https://e-doctor-blog.com/archives/330)
CFPM脳症を疑う場面では、脳波検査が診断に有用です。 Tri-HNCと呼ばれるセフェピム脳症特有の脳波パターンが報告されており、脳波異常は意識障害を呈した患者全例で認められたという報告もあります。 CFPM投与中に意識変容が見られたら、脳波確認を1つのアクションとして検討してください。 congress.jamt.or(http://congress.jamt.or.jp/j74/pdf/general/0187.pdf)
略語の運用ミスが医療事故につながるケースがあります。CFPMとCAZはどちらも「C」で始まるセフェム系抗菌薬で、視覚的に似ています。 書き間違い・読み間違いで異なる薬剤を投与するリスクが否定できません。 hospinfo.tokyo-med.ac(https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/kansen/data/luncheon_2020_04.pdf)
実際、2017年には国内でセフェピムのジェネリック製品が製造工場のトラブルで供給不足となり、代替薬への切り替えが必要になる事態も発生しました。 略語の統一と周知が施設内で重要な理由がここにあります。 yamaguchi.med.or(http://www.yamaguchi.med.or.jp/images/medical/public-relations/1879.pdf)
以下に混同しやすい略語をまとめます。
| 略語 | 一般名 | 注意点 |
|---|---|---|
| CFPM | セフェピム(第4世代) | 緑膿菌カバー・脳症リスク注意 |
| CAZ | セフタジジム(第3.5世代) | 緑膿菌カバーあり・グラム陽性弱め |
| CTRX | セフトリアキソン(第3世代) | 髄液移行性高い・緑膿菌カバーなし |
| CEZ | セファゾリン(第1世代) | 周術期予防に頻用・スペクトル狭い |
日本化学療法学会の公式略語一覧や羊土社の「臨床医学Web略語集」では、CFPMとCAZが明確に区別されています。 施設内マニュアルや電子カルテのプルダウンリストが略語の統一に役立ちます。 chemotherapy.or(https://www.chemotherapy.or.jp/uploads/files/publications/glossary_jjs_ryakugo.pdf)
略語を正確に把握することは、単なる知識習得ではありません。投与ミスの防止、副作用の早期発見、薬剤師・看護師との情報共有の精度向上に直結します。結論はCFPMを「略語として覚える」のではなく「薬剤全体を理解したうえで略語を使う」ことが重要です。
セフェピムの略語・薬理・副作用を一括して調べるには、HOKUTOアプリの「抗菌薬ガイド」が有用で、略称検索にも対応しています。 ベッドサイドで腎機能別投与量をすぐ確認できるため、1つのツールとして手元に入れておくと安心です。 hokuto(https://hokuto.app/post/1C7sjrZiyGtYN2NQGipQ)
以下のリンクには、セフェピム脳症の臨床像・脳波所見・病態について詳しい情報が掲載されています。
セフェピム脳症の臨床症状・発症頻度・改善までの経過(医学ことはじめ)
セフェピム脳症のTri-HNC脳波パターンとシミュレーションについて詳細に解説されています。
セフェピム脳症の特徴的脳波Tri-HNCに関する論文(精神神経学雑誌)
腎機能別の用量調節・CFPM添付文書の詳細(KEGG MEDICUSの処方情報)。
セフェピム塩酸塩 医療用医薬品情報(KEGG MEDICUS)