眼底出血がある患者にカリジノゲナーゼを処方すると、出血が悪化するリスクがあります。
カリジノゲナーゼは「循環障害改善剤」に分類される内服薬で、眼科領域においても添付文書上に正式な効能・効果が認められています。 具体的には、網脈絡膜の循環障害の改善が適応症として定められており、糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症などの疾患に用いられます。 処方の根拠を他職種や患者に説明する際にも、作用機序の把握は欠かせません。 shoku.zenhp.co(https://shoku.zenhp.co.jp/karijinogenazejshohoutokinochuuiten.html)
カリジノゲナーゼは、血漿中のα2グロブリン分画に属するキニノーゲンを酵素的に分解し、ブラジキニンを遊離させます。 このブラジキニンが血管内皮細胞のβ2受容体を刺激して、一酸化窒素(NO)やプロスタグランジン類の産生を亢進させ、強力な血管拡張作用を発揮します。 つまり、眼底の微小循環を改善することが主要な効果です。 shoku.zenhp.co(https://shoku.zenhp.co.jp/karijinogenazejshohoutokinochuuiten.html)
さらに、微小循環速度の亢進を介して組織への血流量を増加させるという経路も確認されています。 血管拡張作用が主体であるため、血圧が低い患者や降圧薬との併用では過度の血圧低下に注意が必要です。これは見逃せないポイントです。 shoku.zenhp.co(https://shoku.zenhp.co.jp/karijinogenazejshohoutokinochuuiten.html)
また、カリジノゲナーゼは腺性カリクレインとも呼ばれ、その代表的な商品名はカルナクリン(三和化学研究所)です。 錠剤タイプが標準的であり、50単位・25単位の規格が存在します。 med.skk-net(https://med.skk-net.com/supplies/faq/carnaculin/index.html)
| 疾患 | 使用目的 | 備考 |
|---|---|---|
| 糖尿病網膜症 | 網膜微小循環の改善 | 血流増加・浮腫改善 |
| 網膜静脈閉塞症 | 静脈血流改善・出血吸収促進 | 抗VEGF薬との併用も報告あり |
| 網脈絡膜循環障害 | 循環改善全般 | 添付文書上の正式適応 |
| 中心性漿液性脈絡網膜症 | 脈絡膜循環改善の補助 | エビデンスは限定的 |
実際の臨床成績を正確に理解することは、患者への説明と処方判断の両面で重要です。これが基本です。
網脈絡膜循環障害を対象とした国内臨床試験において、カリジノゲナーゼ150単位/日を6ヶ月間投与した結果が報告されています。 症状出現眼に対して「やや有効以上」を有効例とした場合の改善率は以下のとおりです。 kegg(https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00071015)
数字だけ見ると非常に高い改善率です。 ただし、試験規模が25例程度と小規模であること、また「やや有効以上」という判定基準が広めに設定されている点は考慮が必要です。意外ですね。 shoku.zenhp.co(https://shoku.zenhp.co.jp/karijinogenazejshohoutokinochuuiten.html)
大規模なランダム化比較試験(RCT)が存在しないため、エビデンスレベルとしては高くないという現実もあります。 しかし、臨床現場で長年使われてきた実績と、作用機序の合理性から、日常診療での使用は継続されています。処方根拠として添付文書のデータを把握しておくことが条件です。 rikunabi-yakuzaishi(https://rikunabi-yakuzaishi.jp/contents/hiyari/120/)
また、投与量の設定においては、150単位/日(標準用量)が使われたことを念頭に置き、実臨床でも同等の用量で使用することが推奨されます。 用量が低すぎると効果が不十分となる可能性があります。 shoku.zenhp.co(https://shoku.zenhp.co.jp/karijinogenazejshohoutokinochuuiten.html)
カリジノゲナーゼを「ただの血流改善薬」と思っているなら、それは損かもしれません。
岐阜薬科大学の研究グループは、カリジノゲナーゼが末梢投与によってVEGF165を切断し、抗血管新生作用を有することを示唆するデータを報告しています。 VEGF165は糖尿病網膜症や加齢黄斑変性において新生血管形成に中心的な役割を果たすタンパク質であり、この切断作用は臨床的に非常に注目に値します。 つまり、血流改善に加えて新生血管の抑制にも関与している可能性があるということです。 gifu-pu.ac(https://www.gifu-pu.ac.jp/lab/seitaikinou3/2011ganyakuri25_54-57_nakamura.pdf)
さらに2016年に報告された臨床研究(UMIN000019036)では、網膜中心静脈閉塞症に対して抗VEGF薬で加療した患者を対象に、カリジノゲナーゼ内服群と非内服群の網膜血流を比較しました。 結果として、乳頭大血管の血流速度改善率はカリジノゲナーゼ投与群で167±73%、非投与群で125±37%と、前者が有意に高い結果(p<0.05)を示しました。 これは使えそうです。 webview.isho(https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1410211838)
一方、視力や中心窩網膜厚の改善については、カリジノゲナーゼ投与群と非投与群の間に有意差はなかったことも同研究では示されています。 抗VEGF薬の効果に上乗せして「血流速度」を底上げする可能性がある一方、視機能そのものへの直接的な寄与は限定的かもしれません。このデータは処方時の期待値設定にとって重要です。 webview.isho(https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1410211838)
眼科専門医と内科・総合診療科が連携して処方する際にも、この「抗VEGF薬との相乗効果」という観点は、患者への説明の説得力を高める情報になります。
参考:岐阜薬科大学によるカリジノゲナーゼの抗VEGF作用に関する基礎研究論文(2011年)
カリジノゲナーゼの抗VEGF作用 ─ 岐阜薬科大学(PDF)
効果への期待だけで処方すると、見落としやすいリスクが潜んでいます。厳しいところですね。
まず、新鮮な眼底出血が認められる患者への処方は慎重を要します。 カリジノゲナーゼの血管拡張・血流増加作用が、出血の悪化につながる可能性があるためです。網膜出血の改善率が100%というデータは、「安定期」の患者を対象にしたものであり、急性期の出血がある患者に対するものではありません。急性期と安定期の区別が条件です。 shoku.zenhp.co(https://shoku.zenhp.co.jp/karijinogenazejshohoutokinochuuiten.html)
次に、降圧薬との相互作用にも注意が必要です。 カリジノゲナーゼ自体に血圧低下作用があるため、ACE阻害薬や他の血管拡張薬と併用する場合、過度の血圧低下が生じる可能性があります。特に高齢者では起立性低血圧のリスクが高まります。 med.skk-net(https://med.skk-net.com/supplies/faq/carnaculin/index.html)
また、カリジノゲナーゼは妊婦または妊娠の可能性がある女性への投与は禁忌とされています。 この点は産婦人科との連携がある施設では特に重要です。眼科単独での判断で漫然と継続処方しないよう注意が必要です。 med.skk-net(https://med.skk-net.com/supplies/faq/carnaculin/index.html)
処方後のフォローアップとして、服用開始後1〜2ヶ月での眼底所見の確認と血圧測定を組み合わせることが望ましい対応です。これが原則です。
参考:カルナクリン(カリジノゲナーゼ)に関する処方・FAQ情報
カルナクリン よくあるご質問 ─ 三和化学研究所(医療従事者向け)
「眼科薬」と思われがちなカリジノゲナーゼは、実は眼科以外でも広く処方されています。意外ですね。
カリジノゲナーゼは、眼科領域だけでなく高血圧症・末梢循環障害・更年期障害などにも処方されており、科を越えた多科処方が日常的に発生しています。 例えば、内科や婦人科から同一患者にすでに処方されている場合、眼科から重複処方してしまうケースが報告されています。 重複投与は副作用リスクを高めます。 rikunabi-yakuzaishi(https://rikunabi-yakuzaishi.jp/contents/hiyari/120/)
特に更年期障害へのカリジノゲナーゼ使用(30〜60IU/日)については、「効果の明確なエビデンスは乏しい」との指摘もあります。 それでも処方が続いているケースがあるため、他科からの処方確認は処方時の必須ステップです。 rikunabi-yakuzaishi(https://rikunabi-yakuzaishi.jp/contents/hiyari/120/)
実際のヒヤリハット事例として、カリジノゲナーゼを含む3剤が長期継続処方されており、確認不足による処方エラーが発生したケースが薬剤師向けの事例集に収録されています。 こういった多科処方のリスクは眼科医・薬剤師の双方が把握しておくべき内容です。 rikunabi-yakuzaishi(https://rikunabi-yakuzaishi.jp/contents/hiyari/120/)
処方前にお薬手帳や電子カルテで他科からの処方歴を確認する、という一手間が重大な過剰投与を防ぐことにつながります。確認する、ただそれだけです。
参考:カリジノゲナーゼを含む多剤継続処方に関するヒヤリハット事例(薬剤師向け)
ユベラNカプセルなど3剤の継続処方の確認不足 ─ リクナビ薬剤師