実は下行性抑制系は常に痛みを抑えるとは限らない。
下行性疼痛抑制系は、中枢神経系に備わる内因性の鎮痛機構です。この系は上位脳から下位脳へと信号を伝える経路で、大脳皮質から中脳、延髄を通って脊髄後角に至る複雑な神経ネットワークを形成しています。 credentials(https://credentials.jp/2022-10/special/)
延髄縫線核は、PAGからの指令を受けて脊髄へ信号を送る中継点として機能します。特に大縫線核は、セロトニン作動性ニューロンを脊髄後角まで投射し、痛み伝導を抑制する役割を担っています。青斑核も同様に重要な構造で、ノルアドレナリンを放出しながら脊髄後角に投射し、痛み信号を抑制します。 nonaka-lc(https://nonaka-lc.com/tips/dissertation-2025-9-16/)
これらの神経核は協調的に働き、脳からのトップダウン制御により脊髄レベルでの痛み信号を調節しているわけです。 ginoseitaiin(https://www.ginoseitaiin.jp/symptoms/kakouseitoutsuuyokuseikei/)
セロトニン(5-HT)は、下行性疼痛抑制系における主要な神経伝達物質の一つです。延髄縫線核から放出されたセロトニンは、脊髄後角に投射されて一次求心性神経と二次ニューロンの間のシナプス伝達を抑制します。 seikagaku.jbsoc.or(https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2017.890841/data/index.pdf)
この抑制作用により、末梢からの痛み情報が二次ニューロンに伝わりにくくなり、結果として痛みが軽減されます。セロトニン受容体は5-HT1から5-HT7までの7つのファミリーに分類され、さらにサブタイプに分かれるため10種類以上存在し、興奮性と抑制性の両方の受容体が含まれています。 yamamotoclinic(https://www.yamamotoclinic.jp/dir30/)
つまり複雑な調節機構です。
vlPAGからの下行性疼痛制御系は、大縫線核だけでなく巨大細胞網様核などの延髄の網様体を含むため、腹側延髄腹内側部(RVM)を介する系と呼ばれています。この経路を通じてセロトニンが脊髄に届き、痛覚伝達の抑制に寄与します。 ginoseitaiin(https://www.ginoseitaiin.jp/symptoms/kakouseitoutsuuyokuseikei/)
運動によってもセロトニンの分泌が促進され、下行性疼痛抑制系が活性化することが知られています。セロトニン系の働きを増強する薬剤として、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や後述するSNRIが臨床応用されています。 hongou-higashiomiya(https://www.hongou-higashiomiya.com/single-post/%E6%85%A2%E6%80%A7%E7%97%9B%E3%81%A8%E9%81%8B%E5%8B%95-%E4%B8%8B%E8%A1%8C%E6%80%A7%E7%96%BC%E7%97%9B%E6%8A%91%E5%88%B6%E7%B3%BB-1)
ノルアドレナリン(NA)は、セロトニンと並んで下行性疼痛抑制系の中心的な神経伝達物質です。青斑核から放出されるノルアドレナリンは、脊髄後角において主にα2受容体を介してシナプス前抑制作用を発揮します。 kaken.nii.ac(https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-18K08863/18K08863seika.pdf)
このシナプス前抑制により、一次知覚神経からの神経伝達物質の放出が抑制され、痛み信号の伝達がブロックされます。青斑核のノルアドレナリン神経は、従来は下行性疼痛抑制系として作用すると考えられてきました。 kaken.nii.ac(https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-18K08863/18K08863seika.pdf)
dlPAGはノルアドレナリンを介した疼痛制御に関与し、ストレッサーに対する能動的対処戦略と関連しています。青斑核と脊髄後角を結ぶノルアドレナリン作動性の下行経路は、セロトニン系と並んでもう一つの重要な痛み抑制ルートとなっています。 nonaka-lc(https://nonaka-lc.com/tips/dissertation-2025-9-16/)
実験的慢性痛モデルでは、ノルアドレナリン作動性下行性抑制系が機能不全を起こし、内因性鎮痛が減弱することが報告されています。これが慢性痛の発症や持続に関与する重要な機序です。 jsrm.gr(https://jsrm.gr.jp/cms/wp-content/uploads/2022/04/2022.4.document_ito.pdf)
慢性疼痛では、下行性疼痛抑制系の機能低下が重要な病態メカニズムとなっています。日本の成人人口の22.5%が慢性疼痛を抱えていると推計されており、この系の破綻が慢性化に大きく関与しています。 knee-blog(https://knee-blog.com/pain-kannsa/)
下行性疼痛抑制系の機能が破綻すると、本来感じない痛みも感じるようになり、中枢性感作と呼ばれる状態に陥ります。中枢性感作では、脊髄レベルでの痛み信号の増幅が生じ、通常では痛みを引き起こさない刺激に対しても過敏に反応するようになります。 knee-blog(https://knee-blog.com/pain-kannsa/)
抑制系が働かないんですね。
うつなどの情動障害が生じると、脳内でノルアドレナリンやセロトニンの産生が低下するため、下行性疼痛抑制系は働きにくくなります。これは心理状態が下行性疼痛抑制系に大きく影響することを示しています。実際、下行性疼痛抑制系のシグナルとなる脳内ドパミン放出量は、心理状態により大きく左右されます。 note(https://note.com/tomosan_bbptnote/n/n08fc4e309019)
下行性疼痛抑制系の機能低下に対して、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)が有効な治療選択肢となっています。SNRIは中枢神経系におけるセロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、これらの神経伝達物質の濃度を上昇させることで下行性疼痛抑制系を賦活します。 note(https://note.com/tomosan_bbptnote/n/n08fc4e309019)
代表的なSNRIとして、デュロキセチン(商品名:サインバルタ)とミルナシプラン(商品名:トレドミン)があります。これらの薬剤を内服すると、脳幹の縫線核や青斑核から出るセロトニン・ノルアドレナリン神経の働きが高まります。 nonaka-lc(https://nonaka-lc.com/tips/dissertation-2025-9-16/)
サインバルタが基本です。
その結果、脊髄後角でのセロトニンとノルアドレナリンの濃度が上昇し、痛み信号の伝達が抑制されます。この機序により、中枢性感作による疼痛に対してもSNRIは効果的に働きます。抗うつ薬は減弱した内因性鎮痛を増強する作用があり、慢性疼痛の治療において重要な役割を果たしています。 jsrm.gr(https://jsrm.gr.jp/cms/wp-content/uploads/2022/04/2022.4.document_ito.pdf)
三環系抗うつ薬も同様に、脳内のノルアドレナリン・セロトニンを増加させて下行性疼痛抑制系を賦活させる作用があります。Ca2+チャネルα2δリガンド(プレガバリンなど)や抗てんかん薬も、中枢神経系のイオンチャネルを介した興奮性神経伝達物質の放出を抑制し、過敏状態にある上行性の疼痛伝達を抑制します。 credentials(https://credentials.jp/2022-10/special/)
これらの薬剤は、下行性疼痛抑制系の機能を改善することで、痛み刺激の増幅を防ぎ、疼痛の緩和をもたらします。患者にとってのメリットは、オピオイド鎮痛薬に頼らずに慢性疼痛をコントロールできる可能性が広がることです。 knee-blog(https://knee-blog.com/pain-kannsa/)
薬物療法と並行して、運動療法も下行性疼痛抑制系を活性化させる有効な手段として推奨されています。運動により脳内でセロトニン、ノルアドレナリン、エンドルフィンなどの神経伝達物質の分泌が促進され、痛みの抑制に寄与します。 hongou-higashiomiya(https://www.hongou-higashiomiya.com/single-post/%E6%85%A2%E6%80%A7%E7%97%9B%E3%81%A8%E9%81%8B%E5%8B%95-%E4%B8%8B%E8%A1%8C%E6%80%A7%E7%96%BC%E7%97%9B%E6%8A%91%E5%88%B6%E7%B3%BB-1)
慢性疼痛のメカニズムと薬物療法の詳細について、福島県立医科大学の専門家による解説
下行性疼痛抑制系とDNIC(広汎性侵害抑制調節)の関係、徒手療法における鎮痛機序の神経科学的解説