未分画ヘパリンを投与した患者の約5%がHITを発症しています。 yuru-pediatrics(https://www.yuru-pediatrics.com/blog/?p=1659)
未分画ヘパリンは、ヘパリンナトリウムとヘパリンカルシウムの2つの塩形態で製造されています。代表的な商品名には、ノボヘパリン(ノボノルディスクファーマ)、カプロシン注(扶桑薬品工業)、ヘパリンNa注(各社)などがあります。これらは分子量3,000~30,000(平均15,000)の酸性ムコ多糖類の集合体です。 tsunepi.hatenablog(https://tsunepi.hatenablog.com/entry/2017/07/08/000000)
各社から多数のヘパリンナトリウム製剤が発売されており、濃度や包装形態が異なります。例えば、持田製薬の「ヘパリンNa注1万単位/10mL『モチダ』」は393円/瓶、ニプロの透析用カテーテルロック用は1,000単位/mLの濃度で提供されています。濃度違いの製剤が混在するため、投与時の確認が必須です。 kegg(https://www.kegg.jp/medicus-bin/similar_product?kegg_drug=DG00150)
医療現場では「ヘパリンNa注」と「ヘパリンNaロック用」が混同しやすい名称になっており、本来の目的以外に使用すると過小投与あるいは過量投与になる可能性があります。つまり名称の確認が必須です。 anesth.or(https://anesth.or.jp/files/pdf/med_list_20191226.pdf)
製剤選択の際は、用途(DIC治療、透析、カテーテル管理など)と濃度を明確にし、処方箋や指示書の記載内容を複数人で確認する体制が推奨されます。投与量間違いの事例も報告されており、5,000単位の予定が誤投与された例があります。 med-safe(https://www.med-safe.jp/pdf/report_2020_2_T002.pdf)
DIC(播種性血管内凝固)治療における未分画ヘパリンの標準的投与量は、1日5,000~10,000単位を24時間持続点滴で行います。具体的には、10,000~30,000単位を5%ブドウ糖注射液、生理食塩液、リンゲル液1,000mLで希釈し、最初1分間30滴前後の速度で投与します。投与中は全血凝固時間またはWBAPTTが投与前の2倍程度になるよう調節する必要があります。 pins.japic.or(https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00062592.pdf)
初回投与時は4,000~6,000単位を経静脈投与し、必要に応じて10,000単位まで増量可能です。出血リスクがある場合は2,000~3,000単位に減量します。DICが基本です。 kyodokodo(http://kyodokodo.jp/doc/haisokusen/2-11-2.pdf)
モニタリングはAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)を用いて行い、基準値上限に調節することで効果をより確実にします。外傷例を除いた急性期DIC症例に早期投与すると転帰が有意に改善したというデータもあります。これは使えそうです。 med.mochida.co(https://med.mochida.co.jp/qa/hp-ca-h.html)
投与中は出血傾向の観察が必須で、過剰投与が判明した場合は硫酸プロタミンで中和します(未分画ヘパリン100単位あたり0.5mgのプロタミン)。 kyodokodo(http://kyodokodo.jp/doc/haisokusen/2-11-2.pdf)
透析における未分画ヘパリンの使用には、全身ヘパリン化法と局所ヘパリン化法の2つがあります。全身ヘパリン化法では、透析開始前に1,000~3,000単位を投与し、透析開始後は1時間当たり500~1,500単位を持続的に、または1時間ごとに間歇的に追加します。この方法は透析患者の標準的アプローチです。 pins.japic.or(https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00062592.pdf)
局所ヘパリン化法では、1時間当たり1,500~2,500単位を持続注入し、体内灌流時にプロタミン硫酸塩で中和します。出血リスクが高い患者に適しています。 pins.japic.or(https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00062592.pdf)
透析用ヘパリン製剤には、250単位/mLの低濃度製剤もあり、扶桑薬品工業の「ヘパリンNa透析用250単位/mL『フソー』20mL」は215円/管です。投与量調整がしやすい濃度です。 kegg(https://www.kegg.jp/medicus-bin/similar_product?kegg_drug=DG01709)
カテーテルロック用として1,000単位/mL製剤も使用され、血管カテーテル挿入時の血液凝固防止に用いられます。透析用途では投与量が多いため、濃度間違いによる過量投与のリスクに特に注意が必要です。 jsth.medical-words(https://jsth.medical-words.jp/words/word-470/)
血栓予防目的の未分画ヘパリン皮下注射には、低用量法と用量調節法があります。低用量法では、8時間もしくは12時間ごとに5,000単位を皮下注射し、通常はAPTTを延長させないように使用します。この方法は手術後の深部静脈血栓症予防に広く用いられます。 med.mochida.co(https://med.mochida.co.jp/qa/hp-ca-h.html)
用量調節法では、最初に約3,500単位を皮下注射し、投与4時間後のAPTTが目標値となるように8時間ごとに前回投与量±500単位で調整します。効果がより確実です。 med.mochida.co(https://med.mochida.co.jp/qa/hp-ca-h.html)
ヘパリンカルシウム製剤の代表例として、持田製薬の「ヘパリンカルシウム皮下注5千単位/0.2mLシリンジ『モチダ』」があり、使いやすいプレフィルドシリンジ形態です。投与間違いが減ります。 med.mochida.co(https://med.mochida.co.jp/qa/hp-ca-h.html)
脊椎麻酔・硬膜外麻酔を行う場合、低用量(5,000単位皮下注)では刺入操作は未分画ヘパリン投与から4時間空ける必要があります。ただし高濃度未分画ヘパリン皮下注(20,000単位)では投与後10時間空けることが推奨されています。厳しいところですね。 ja-sper(http://www.ja-sper.org/guideline2/07_page.html)
未分画ヘパリンと低分子ヘパリンの最大の違いは、分子量と作用機序です。未分画ヘパリンは分子量3,000~30,000(平均15,000)ですが、低分子ヘパリンは酵素的・化学的処理により約5,000に抽出されています。分子量が小さいほど半減期が長くなり、投与回数を減らせます。 tsunepi.hatenablog(https://tsunepi.hatenablog.com/entry/2017/07/08/000000)
作用の違いとして、未分画ヘパリンは17個以上の糖鎖がありトロンビンを包み込むように阻害できますが、低分子ヘパリン(16個以下)はトロンビン阻害作用が弱く、主にXa阻害のみです。抗Xa/トロンビン比は、低分子ヘパリンで2~5対1になります。 3nai(http://www.3nai.jp/weblog/entry/22742.html)
低分子ヘパリンの代表的商品には、ダルテパリン(フラグミン)とエノキサパリン(クレキサン)があります。フラグミン静注5000単位/5mLは492円/瓶で、DICや血液体外循環時に使用されます。クレキサンは術後DVT予防として2,000(20mg)IU×2回皮下注で投与されます。 3nai(http://www.3nai.jp/weblog/entry/22742.html)
低分子ヘパリンは出血性の副作用が少なく、血栓傾向を伴う悪性腫瘍に推奨されます。半減期は2~4時間で未分画ヘパリンより長いのが特徴です。つまり投与管理が楽です。 hokuto(https://hokuto.app/erManual/MQfEDEyQxRi4DeA5JJbA)
HIT(ヘパリン起因性血小板減少症)は、ヘパリン投与が誘因となりヘパリンとPF4(血小板第4因子)の複合体に対する抗体が産生される重篤な副作用です。未分画ヘパリンによる免疫学的測定法陽性率は29.8%ですが、実際のHIT発症は4.8%、血栓症を伴うHIT-T発症は3.6%です。HIT抗体陽性だけでHITと診断すると過剰診断につながります。 jsth(https://www.jsth.org/pdf/oyakudachi/202208_19.pdf)
HITの約50%に血栓塞栓症が発症し、静脈血栓20~50%、動脈血栓3~10%の頻度です。発症時期は通常ヘパリン投与開始後5~10日ですが、遅発発症型(ヘパリン中止後の発症)もあります。痛いですね。 hospi.sakura.ne(http://hospi.sakura.ne.jp/wp/wp-content/themes/generalist/img/medical/jhn-cq-iizuka-150501.pdf)
HITが疑われる場合、直ちにヘパリンを中止し、代替抗凝固薬への変更が必要です。低分子ヘパリンもHITのリスクがあるため、フォンダパリヌクス(アリクストラ)やダナパロイド(オルガラン)への変更が推奨されます。中和薬として硫酸プロタミンが保険適用されています。 jsth.medical-words(https://jsth.medical-words.jp/words/word-470/)
定期的な血小板数モニタリングがHIT早期発見の鍵で、投与前値の50%以下への減少や10万/μL以下への低下が疑いの指標です。特に心臓血管外科手術や整形外科手術後の患者ではリスクが高いため、注意深い観察が求められます。 yuru-pediatrics(https://www.yuru-pediatrics.com/blog/?p=1659)
日本血栓止血学会:ヘパリン起因性血小板減少症の診断・治療ガイドライン