実は甲状腺機能低下症患者の約2割が認知症と誤診されています。 nagasaki-clinic(https://www.nagasaki-clinic.com/dymentia/)
橋本甲状腺炎の初期段階では、ほとんど自覚症状がないことが特徴です。しかし、甲状腺の腫れだけは初期から認められるため、病気を見つける重要な手がかりとなります。甲状腺全体が腫れる「びまん性甲状腺腫」がみられ、この腫れはゆっくり進行するため初期のころはあまり目立ちません。 koujosen(https://koujosen.jp/hashimoto/385)
甲状腺の表面は固く、ごつごつとした感じで腫れてくることが多く、触診でこの特徴的な硬さを確認できます。岐阜赤十字病院の調査によると、機能低下症患者のうち甲状腺の腫れを自覚するのは70~80%に上ります。肩こりが約50%、首の異物感が約40%と続き、これらの症状が患者を受診に導く契機となっています。つまり頸部症状が診断の糸口ですね。 iritani(https://www.iritani.jp/medical/naika08.html)
患者が訴える首の圧迫感や違和感は、甲状腺が腫大することで周囲の組織を圧迫するために生じます。また、声がかすれる(嗄声)症状も約20%で認められており、これは甲状腺の腫脹が反回神経に影響を与えたり、声帯のむくみが生じたりすることが原因です。初期段階では甲状腺機能は正常に保たれていることが多いため、頸部の視診・触診が診断において極めて重要な役割を果たします。 j-endo(https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=41)
甲状腺機能低下症に進行すると、全身の代謝が低下することによって多彩な症状が出現します。無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが典型的な症状です。これらの症状は甲状腺ホルモンの不足により、全身の新陳代謝が低下し「全てが老けていくような」変化として現れます。 kanaji(https://www.kanaji.jp/hashimotobyou/)
体温調節の異常も顕著で、患者は低体温傾向を示し、寒冷に対する耐性が著しく低下します。循環器症状としては徐脈(脈が遅くなる)が特徴的で、心臓の動きがゆっくりになり脈の回数が減少します。重症例では心のう(心臓の周囲を覆う袋)に水が溜まって心臓が大きくなることもあります。徐脈は診察時の重要サインです。 cloud-dr(https://cloud-dr.jp/medical-navi/disease/1606/)
消化器症状では便秘が高頻度にみられ、食欲低下にもかかわらず体重が増加するという特徴的なパターンを示します。皮膚は乾燥してガサガサになり、汗が出にくくなります。脱毛や眉が薄くなる症状も認められ、爪も脆弱化します。顔や手足にむくみが生じるのは、皮膚や皮下組織にムコ多糖類が沈着する粘液水腫によるものです。 mymc(https://mymc.jp/clinicblog/147432/)
筋骨格系では、脱力感や筋力低下が生じ、肩こりや筋肉の疲れが顕著になります。女性患者では月経過多などの月経異常が起こることもあり、不妊の原因となる場合があります。橋本病と診断されている患者のうち、実際に甲状腺機能低下症の症状がみられるのは約2~3割程度であり、症状があらわれていない間は治療の必要はありません。 thyroid-navi.kuma-h.or(https://thyroid-navi.kuma-h.or.jp/disease/hashimoto_disease/)
甲状腺機能低下症では脳の活動も緩慢になり、思考力低下・記憶障害が起きるため、うつ病や認知症と間違われるケースがよくあります(仮性認知症)。物忘れ、無気力、集中力の低下といった症状が現れ、会話が遅くなる、言語緩慢、無関心様表情などの特徴的な所見が認められます。 mymc(https://mymc.jp/clinicblog/147432/)
JAMA Neurology誌に掲載された2022年の大規模コホート研究では、65歳以上の被験者約24万人を対象に調査が行われ、甲状腺機能低下症のある高齢者は認知症リスクが1.81倍に上昇することが示されました(95%CI: 1.38-2.36)。特に甲状腺ホルモン補充療法を受けていない群ではリスクが顕著でした。認知症リスクは約2倍ですね。 kamata-yamada-cl(https://www.kamata-yamada-cl.com/%E7%94%B2%E7%8A%B6%E8%85%BA%E6%A9%9F%E8%83%BD%E4%BD%8E%E4%B8%8B%E3%81%A8%E8%AA%8D%E7%9F%A5%E7%97%87%E3%81%A8%E3%81%AE%E9%96%A2%E4%BF%82/)
fMRIやPETを用いた研究では、甲状腺ホルモン低下時には海馬の活動性が減少することや、前頭葉の代謝低下が報告されており、機能的脳画像による病態の可視化が進んでいます。また、脳内の神経伝達物質への影響からパーキンソン症状を引きおこすこともあり、パーキンソン自体の仮性認知症が加わることもあります。 nagasaki-clinic(https://www.nagasaki-clinic.com/dymentia/)
甲状腺機能が低下している状態を知らずに放置しておくと、徐々に物忘れがひどくなったり、認知機能が低下したり、人格が変化したりしてきます。これらの症状は認知症の症状とほとんど同じであるため、高齢患者で認知機能低下を認めた場合には、甲状腺機能のスクリーニングを行うことが重要です。甲状腺ホルモン補充により認知機能が改善する可能性があるため、見逃さないことが患者の予後に直結します。 mitani-naika(https://mitani-naika.jp/blog/archives/533/)
橋本病では通常、甲状腺機能低下症の症状が主体ですが、時に甲状腺ろ胞が破壊されて甲状腺ホルモンが血中に流出し、一時的に甲状腺ホルモンが過剰となることがあります。この状態を「無痛性甲状腺炎」といい、バセドウ病と紛らわしい症状がでることがあります。通常は甲状腺の痛みはなく、3か月以内でおさまります。 j-endo(https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=41)
無痛性甲状腺炎の亢進期では、動悸、発汗の増加、体重減少、手の震え、不眠やいらだちなどの症状が現れます。この亢進期は数週間から2カ月程度続くことが多く、やがて正常期を経由して低下期へ移行します。低下期も1~2カ月ほどで改善に向かう場合が大半ですが、さらに長期化する例や、完全に機能が戻らないまま橋本病へ移行するケースも報告されています。 oogaki.or(https://oogaki.or.jp/endocrine/thyroid/hashimotos-thyroiditis/)
無痛性甲状腺炎と亜急性甲状腺炎の鑑別は重要です。亜急性甲状腺炎では強い痛みが特徴的であるのに対し、無痛性甲状腺炎では痛みはほぼありません。また、無痛性甲状腺炎の炎症の原因は自己免疫とされており、ウイルス感染が関与する亜急性甲状腺炎とは病態が異なります。痛みの有無が鑑別点です。 oogaki.or(https://oogaki.or.jp/endocrine/thyroid/painless-thyroiditis/)
超音波検査では、無痛性甲状腺炎の急性期には甲状腺全体が低エコー(黒く見える)を呈し、ドプラー検査では甲状腺内に血流を感知しないという特徴があります。橋本病を持っている人が無痛性甲状腺炎を発症することが多く、過剰なヨード摂取やストレスが誘因となることがあります。バセドウ病と間違えて抗甲状腺薬を投与すると無効であり、正確な診断が治療方針の決定に不可欠です。 nagasaki-clinic(https://www.nagasaki-clinic.com/painless/)
橋本病の症状の中には、一般的にあまり知られていない非典型的なものも存在します。腱反射の弛緩相の低下は、神経学的所見として重要ですが、日常診療で見落とされやすい所見です。アキレス腱反射を観察すると、反射後の筋弛緩が著しく遅延する特徴的なパターンを示します。 mymc(https://mymc.jp/clinicblog/147432/)
眼瞼浮腫、舌や口唇の浮腫、難聴なども報告されている症状ですが、患者自身がこれらを甲状腺疾患と結びつけて考えることは少なく、他の疾患として扱われてしまう可能性があります。声の低声化は嗄声とは異なり、声帯のむくみにより声のトーンが低くなる現象で、患者本人よりも周囲が気づくことが多い症状です。 archive.okinawa.med.or(https://archive.okinawa.med.or.jp/old201402/activities/kaiho/kaiho_data/2008/200807/029.html)
また、甲状腺機能低下症は脳の活動も緩慢になり、せん妄、幻覚、幻視なども起こりうるため、精神科疾患と間違われることがあります。甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)を突然中止して、せん妄、見当識障害、記憶障害、言語障害を起こした報告もあり、治療開始後の継続的な服薬管理も重要です。 nagasaki-clinic(https://www.nagasaki-clinic.com/dymentia/)
橋本病の経過観察中にまれに「橋本病の急性増悪」を発症することがあります。首(甲状腺)の痛みや発熱を伴い、甲状腺機能低下症の症状も発現する急性の病態で、非ステロイド性抗炎症薬やステロイドによる治療が必要となります。通常の橋本病では痛みがないため、痛みを伴う急性増悪は見逃さずに対応する必要があります。 thyroid-navi.kuma-h.or(https://thyroid-navi.kuma-h.or.jp/disease/hashimoto_disease/)