外傷がない患者でも半数が劇症型溶連菌を発症します。
劇症型溶連菌感染症の初期症状は一般的な感染症と見分けがつきにくく、発熱、全身倦怠感、筋肉痛といった非特異的な前駆症状から始まります。38.5℃以上の高熱が出現し、四肢や背部に強い筋肉痛が現れるのが特徴です。これらの症状は風邪やインフルエンザと類似しているため、初期段階での鑑別診断が極めて重要になります。 kobe-kishida-clinic(https://kobe-kishida-clinic.com/infectious/infectious-disease/stss/)
初期段階では咽頭痛、消化器症状(食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢)、血圧低下などの敗血症症状も認められます。患者の約半数は明確な感染巣が確認できず、表面的な細菌侵入口や皮膚・軟部組織感染の所見が存在しない症例が50%程度あるとされています。つまり外傷がないからといって安心できません。 city.tochigi.lg(https://www.city.tochigi.lg.jp/soshiki/29/71988.html)
本症で最も特徴的で頻度の高い症状は「痛み」であり、多くは四肢に発生します。24時間から48時間以内に収縮期血圧90以下のショック状態が起こり、急速に肺、腎臓、肝臓を中心とした多臓器不全に陥ります。数十時間という短時間での病状進行が本疾患の最大の特徴です。 soujinkai.or(https://soujinkai.or.jp/himawariNaiHifu/stss/)
発症後の経過は非常に急激かつ劇的で、数時間単位で症状が悪化することがあります。初期の風邪様症状から数十時間以内に筋肉周辺組織の壊死、呼吸状態の悪化、多臓器不全へと進展し、死に至る可能性があります。早期発見と迅速な対応が生死を分ける鍵となります。 dcc-irs.jihs.go(https://dcc-irs.jihs.go.jp/material/manual/stss.html)
通常の溶連菌感染症は子どもに多く見られ、咽頭炎や扁桃炎が主な症状です。乳幼児では咽頭炎、年長児や成人では扁桃炎、気管支炎、猩紅熱といった全身症状(発疹、イチゴ舌など)を呈することがあります。発熱や喉の痛みが中心で、適切な抗菌薬治療により通常は改善します。 health.kirin.co(https://health.kirin.co.jp/column/vol22/)
一方、劇症型は30歳以上の大人に多く発症し、腕や足の痛み、腫れ、発熱、血圧の低下などから症状が始まるのが特徴です。通常は細菌が存在しない血液や筋肉、肺などに溶連菌が侵入すると、致命的な症状を引き起こします。子どもから大人まで発症する可能性がありますが、特に30歳以上で発症頻度が高いのが劇症型の特徴です。 happiness-direct(https://www.happiness-direct.com/shop/pg/1h-vol768/)
致死率の違いも顕著で、通常の溶連菌感染症は適切な治療により完治しますが、劇症型は致死率30~70%と極めて高い数値を示しています。2023年の死者数は97人で、感染者の約30%が死亡しており、19年の101人に次いで多い死者数となっています。この高い致死率が医療従事者として警戒すべき最大の理由です。 scienceportal.jst.go(https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20240410_n01/)
症状の進行速度も大きく異なります。通常型は数日かけて症状が出現しますが、劇症型は24~48時間以内にショック状態に陥り、数十時間で多臓器不全へ進展します。この急速な進行が治療介入の時間的余裕を奪い、高い致死率につながっています。 soujinkai.or(https://soujinkai.or.jp/himawariNaiHifu/stss/)
劇症型溶連菌感染症は誰にでも発症する可能性がありますが、糖尿病患者、高齢者、妊産婦はリスクが高いとされています。しかし該当しない健康な成人でも発症するため、年齢や基礎疾患の有無にかかわらず注意が必要です。重篤な基礎疾患を持っていないにもかかわらず突然発症する例が多く報告されています。 id-info.jihs.go(https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/streptococcal-toxic-shock-syndrome/index.html)
年齢分布では30歳以上の成人に多く、特に中高年層での発症が目立ちます。2023年7月から12月中旬に報告された死亡例では、50歳未満の患者68人のうち21人が亡くなっており、若年層でも致命的な経過をたどることが明らかになっています。若いから安全という認識は誤りです。 health.kirin.co(https://health.kirin.co.jp/column/vol22/)
感染経路は創傷感染と飛沫感染の2通りがあります。ケガや手術などで皮膚の傷口から侵入する創傷感染、喉や鼻の粘膜から侵入する飛沫感染が主な経路ですが、感染者の約半数が感染経路不明とされています。表層的な外傷がなくても、打撲等による筋組織や筋膜の損傷がある場合、A群溶血性連鎖球菌による深部感染が生じうるとされています。 happiness-direct(https://www.happiness-direct.com/shop/pg/1h-vol768/)
日本における最初の症例報告は1992年で、以降毎年100~200人の感染確認が報告されています。2023年から2024年にかけて感染者が急増し、ニュースで大きく報じられました。過去最多だった昨年を上回る勢いで患者数が推移しており、医療従事者として常に本疾患を鑑別診断に挙げる姿勢が求められます。 scienceportal.jst.go(https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20240410_n01/)
身体診察ではバイタルサインの確認が最優先です。血圧低下、頻脈、頻呼吸などのショック徴候を評価し、皮膚所見では発赤、腫脹、水疱形成、壊死性変化などを確認します。筋肉の触診で圧痛や硬結の有無を評価し、意識レベルの低下や錯乱の有無も確認します。皮膚所見と全身状態の評価が診断の鍵となります。 kobe-kishida-clinic(https://kobe-kishida-clinic.com/infectious/infectious-disease/stss/)
検査項目では血液培養と創部培養が特に重要です。A群溶血性連鎖球菌が検出されれば劇症型溶連菌感染症の診断に大きく近づきます。検査材料としては通常無菌的な部位(血液、髄液、胸水、腹水)、生検組織、手術創、壊死軟部組織から分離・同定を行います。これらの無菌部位からの菌検出が診断基準の一つとなっています。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-06.html)
診断基準は以下の3項目です: kobe-kishida-clinic(https://kobe-kishida-clinic.com/infectious/infectious-disease/stss/)
- A群溶血性連鎖球菌の分離(血液、組織、通常無菌部位から)
- 低血圧の存在
- 多臓器不全の存在(2つ以上の臓器系統の障害)
これらの基準を満たす場合に劇症型溶血性連鎖球菌感染症と診断されます。ただし臨床的に強く疑われる場合は全ての基準を満たさなくても暫定的に本症として対応することがあります。数時間単位で進行するため、診断確定を待たずに治療を開始する判断が必要な場面もあります。 kobe-kishida-clinic(https://kobe-kishida-clinic.com/infectious/infectious-disease/stss/)
鑑別診断では壊死性筋膜炎、ガス壊疽、敗血症性ショック、その他の重症軟部組織感染症などを考慮します。症状の特徴や経過、培養結果、画像所見などを総合的に判断します。本症は急速に進行して致命的となる可能性が高いため、迅速な診断と対応が求められます。 kobe-kishida-clinic(https://kobe-kishida-clinic.com/infectious/infectious-disease/stss/)
第一選択薬はペニシリン系抗菌薬です。極端な敗血症病態では、クリンダマイシンを推奨する意見もあります。さらに免疫グロブリン製剤の効果も報告されており、集中管理のもとでの治療が必要となります。早期の抗菌薬投与が予後を改善する鍵です。 jaca2021.or(https://jaca2021.or.jp/news/stss/)
血圧維持には大量の輸液が必要ですが、輸液量の許容範囲が狭いため肺動脈圧の経時的観察が必須です。ショック状態の管理には循環動態のモニタリングと適切な輸液バランスの調整が求められます。集中治療室での管理が望ましく、多職種チームでの対応が重要となります。 hiro-clin(https://www.hiro-clin.com/Streptococcal-infection)
壊死組織がある場合は外科的デブリドマンが必要になることがあります。軟部組織壊死が進行している場合、早期の外科的介入が生存率を改善する可能性があります。内科的治療と外科的治療の組み合わせが治療の基本戦略となります。
予防方法としては手指衛生、咳エチケット、傷口の清潔な処置といった基本的な感染対策が有効です。飛沫感染や接触感染によって感染することから、日常の感染症対策が拡大防止のために重要となります。手足等の傷口から感染する場合があるため、傷口を汚れた手で触らないなど清潔に保つことが大切です。 pref.osaka.lg(https://www.pref.osaka.lg.jp/o100030/iryo/osakakansensho/yourenkin.html)
傷を洗浄するなど適切な処置を行うこと、水虫の治療を行い足に傷を作らないことで少しは予防できる可能性があります。普段と違う症状の場合は早めの医療機関受診が推奨されます。患者教育として、四肢の強い痛みと発熱が同時に出現した場合は直ちに受診するよう指導することが重要です。 inazawa-orizu-skinclinic(https://inazawa-orizu-skinclinic.jp/blog/post-104/)
厚生労働省の公式ページには劇症型溶連菌感染症の詳細な症状、予防法、受診の目安が掲載されています
厚生労働省の感染症発生動向調査では最新の患者数データと病原体診断の方法が確認できます