嚥下リハビリテーション病院で知るべき多職種連携と訓練の最新知識

嚥下リハビリテーションを病院で実施する際に必要な多職種連携・訓練法・診療報酬の知識を網羅。急性期から回復期まで医療従事者が押さえるべき実践ポイントとは?

嚥下リハビリテーションと病院での実践アプローチ

嚥下リハビリを「STだけの仕事」と思っていると、あなたのチームは誤嚥性肺炎の再入院率を下げられません。


嚥下リハビリテーション 病院:3つのポイント
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多職種チームの体制が成否を決める

ST・医師・看護師・管理栄養士・リハビリが協働するSST(摂食嚥下サポートチーム)の整備が、誤嚥性肺炎の再発防止に直結します。

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摂食機能療法の算定ルールを正確に把握する

30分以上で185点、30分未満で130点。開始3か月以内は毎日算定可能という特例があり、適切な請求が病院経営にも影響します。

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間接訓練と直接訓練を組み合わせる

食物を使わない間接訓練(頭部挙上訓練・バルーン法など)と、実食を用いた直接訓練(横向き嚥下法・交互嚥下法など)の使い分けが機能回復を左右します。


嚥下リハビリテーションの基本概念と病院内での位置づけ


摂食嚥下リハビリテーションとは、「食べること」「飲み込むこと」に障害を持つ患者に対して、機能回復と誤嚥予防を目的として行われる包括的なアプローチです。 単に「飲み込めない」と一括りにされがちですが、実際には拒食・歯科的な咀嚼障害・嚥下困難・誤嚥・食道通過不良など、複数のメカニズムが混在しています。 つまり、原因の見極めが治療の起点です。 peg.or(https://www.peg.or.jp/care/enge/enge02.html)


早期介入が結果を大きく左右することが、複数の研究で示されています。 発症後できるだけ早く嚥下評価を行い、リスクの高い患者を抽出する体制を各病棟で整えることが、現場での基本原則です。 評価なしに「しばらく絶食」という判断を続けることは、不必要な食止めを増やし、QOLを損なうリスクがあります。 webview.isho(https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1552200042)


嚥下リハビリ病院での間接訓練・直接訓練の使い分け

嚥下訓練は大きく「間接訓練」と「直接訓練」の2種類に分かれます。 間接訓練は食物を使わずに嚥下関連筋群を鍛え、感覚・運動機能を高めることを目的とします。 直接訓練は実際に飲食物を使って嚥下の上達を図るもので、両者を組み合わせることが機能回復の近道です。 clinico.co(https://www.clinico.co.jp/columns/dysphagia003/)


代表的な間接訓練には以下のものがあります。 tyojyu.or(https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rehabilitation/enge-kiso.html)


- 🧘 嚥下体操:首・肩・頬・舌・発声(パタカ)の10項目を1セットとして、食前に実施
- 💪 頭部挙上訓練(シャキア法):仰臥位で頭部を挙上する運動。舌骨上筋群を強化し、食道入口部の開大を促す
- 🎈 バルーン法:カテーテルバルーンを使って食道入口部を拡張する訓練
- ❄️ のどのアイスマッサージ(冷圧刺激法):嚥下反射の誘発を目的とした感覚刺激


直接訓練では、以下の手技が臨床でよく用いられます。 tyojyu.or(https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rehabilitation/enge-sesshoku.html)


- ↔️ 横向き嚥下法:患側に頸部を回旋して嚥下。健側咽頭を広げ、誤嚥リスクを軽減
- 🔄 交互嚥下法:固形物と流動物を交互に摂取し、咽頭残留を防ぐ
- 2️⃣ 複数回嚥下法:1口嚥下後にもう一度空嚥下を促す
- 🍮 スライス型ゼリー丸のみ法:嚥下反射が弱い患者に対してゼリーを使って反射を誘発



参考:嚥下直接・間接訓練の手技一覧(日本摂食嚥下リハビリテーション学会)

訓練法のまとめ(2014版)- 日本摂食嚥下リハビリテーション学会(PDF)


嚥下リハビリテーション病院における多職種チーム(SST)の役割

各職種の主な役割は以下のとおりです。 kajikawa.or(https://kajikawa.or.jp/wp-content/uploads/2023/09/tanpopo_042_2023_autumn.pdf)


| 職種 | 嚥下チームにおける主な役割 |
|------|--------------------------|
| 医師 | 嚥下評価の指示・嚥下造影(VF)・嚥下内視鏡(VE)の実施 |
| ST(言語聴覚士) | 嚥下機能評価・訓練の計画と実施・食形態の調整提案 |
| 看護師 | 病棟での食事介助・口腔ケア・リンクナースとしての情報集約 |
| 管理栄養士 | 食形態の決定・栄養管理・とろみ調整の指導 |
| 薬剤師 | 嚥下に影響を与える薬剤(抗精神病薬抗コリン薬等)のチェック |
| 歯科衛生士 | 口腔内環境の管理・義歯調整の連携 |


チームが機能するためには、定期カンファレンスと回診の実施が重要です。 南大阪病院では口腔ケアと摂食嚥下のラウンドを2週間に1回、チームミーティングを月1回実施しているという体制が紹介されています。 定期的なPDCAサイクルが継続的な改善につながります。 minamisakai(https://minamisakai.jp/rehabilitation/activity-report/)



参考:摂食嚥下チームの構成と活動内容の実例(愛媛大学関連施設)


嚥下リハビリ病院での診療報酬「摂食機能療法」算定ポイント

嚥下リハビリに関連する診療報酬では、「H004 摂食機能療法」が中心的な算定項目です。 算定点数は30分以上の場合が185点、30分未満の場合が130点に設定されています。 点数だけ覚えておけばOKではありません。算定条件の理解が収益と質の両立につながります。 pt-ot-st(https://www.pt-ot-st.net/contents4/medical-treatment-reiwa-4/department/564)


重要な特例ルールがあります。 pt-ot-st(https://www.pt-ot-st.net/contents4/medical-treatment-reiwa-4/department/564)


- 通常:摂食機能障害を有する患者に対し、1か月に4回まで算定可能
- 3か月以内の特例:治療開始日から3か月以内の患者については、1日につき算定可能(毎日算定可能)
- 脳卒中患者で摂食機能障害を有する場合は、30分未満でも130点で算定できるケースがある pt-ot-st(https://www.pt-ot-st.net/contents4/medical-treatment-reiwa-4/department/564)


「治療開始から3か月以内は毎日算定できる」という特例を知らないまま、月4回しか請求していないケースが現場では起こりがちです。 急性期・回復期病院では特にこの特例の活用が重要で、適切な請求が行われなければ病院の収益にも影響します。 pt-ot-st(https://www.pt-ot-st.net/contents4/medical-treatment-reiwa-4/department/564)


訓練の実施記録と評価記録を適切に残すことは、算定要件を満たすためにも不可欠です。 東邦大学大森病院の取り組みでは、摂食機能療法の算定を「嚥下障害対策の5要素の1つ」として体系的に位置づけており、算定管理と臨床質の向上を一体で進めています。 つまり、記録と算定の管理が臨床評価の証拠にもなるということです。 webview.isho(https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1552200042)



参考:令和4年・令和6年診療報酬改定における摂食機能療法の算定要件

H004 摂食機能療法(1日につき)| 令和4年診療報酬改定情報 - PT・OT・ST.NET


嚥下リハビリテーション病院で見落とされがちな「薬剤性嚥下障害」対策

嚥下機能の低下要因として「薬剤」が見落とされているケースは、臨床現場で決して少なくありません。これは独自視点ですが、見逃すと訓練効果が出ないまま時間を浪費するリスクがある重要なポイントです。


薬剤性嚥下障害を引き起こしやすい主な薬剤カテゴリは以下のとおりです。


- 💊 抗コリン薬:唾液分泌抑制→口腔乾燥→嚥下困難
- 💊 ベンゾジアゼピン系薬・睡眠薬:筋弛緩作用により嚥下関連筋の協調運動が低下
- 💊 抗精神病薬(定型):嚥下反射の遅延、錐体外路症状による咀嚼・嚥下機能への影響
- 💊 ACE阻害薬:逆に嚥下反射を改善するとされており、誤嚥性肺炎予防に活用される場合がある
- 💊 カルシウム拮抗薬:食道括約筋の弛緩を引き起こし、逆流性の嚥下問題を悪化させることがある


訓練を積んでも改善が乏しい患者では、定期処方薬の見直しを検討することが有効なアプローチです。 薬剤師との連携が強みを発揮するのは、まさにこの場面です。


嚥下機能に影響する薬剤が見直されただけで、嚥下評価スコアが改善した事例は複数報告されています。 リハビリが「効いていない」と思われている患者の一部は、薬剤による抑制が原因である可能性があります。 結論は「薬剤評価なしの嚥下リハビリは不完全」です。


多職種チームに薬剤師が加わることで、この死角をカバーできます。 処方内容の確認を毎回のカンファレンスの議題に含める運用を検討することが、現場での具体的なアクションになります。 これは使えそうです。



参考:嚥下障害と薬剤・神経疾患の関連(日本神経治療学会ガイドライン)

標準的神経治療:神経疾患に伴う嚥下障害(PDF)- 日本神経治療学会


嚥下リハビリテーション病院での評価ツールと退院支援の実際

嚥下機能の客観的な評価には、スクリーニング検査から精密検査まで複数のツールが使われます。 代表的なスクリーニングには「反復唾液嚥下テスト(RSST)」「改訂水飲みテスト(MWST)」「フードテスト」などがあり、結果に応じて嚥下造影(VF)や嚥下内視鏡(VE)へ進みます。 評価ツールを選ぶ基準は「患者の状態と実施可能な環境」が条件です。 kompas.hosp.keio.ac(https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000270/)


精密検査として行われる嚥下造影検査(VF)は、X線透視下で実際の嚥下動態を映像で確認できる検査です。 造影剤を混ぜた食品を摂取しながら、口腔期・咽頭期・食道期の各フェーズを評価します。 VFが難しい環境では、嚥下内視鏡(VE)が代替手段として活用されます。 kompas.hosp.keio.ac(https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000270/)


退院時の嚥下支援も病院の重要な役割です。 東邦大学大森病院の事例では、「嚥下障害の退院支援」が嚥下障害対策の5要素の1つとして明確に組み込まれています。 退院後に適切な嚥下ケアが継続されなければ、誤嚥性肺炎の再入院リスクは高止まりします。 tobu.saiseikai.or(https://www.tobu.saiseikai.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2022/10/qi2021_32.pdf)


誤嚥性肺炎患者の4週以内の再入院率に関するデータでは、施設によっては10%を超えるケースも報告されています。 この数字は、退院後のケア連携の質を問うものです。 自院のデータを把握しておくことが、チームのPDCAの起点になります。 eph.pref.ehime(https://www.eph.pref.ehime.jp/epch/guide/asset/20251209-qi-data-22.pdf)


退院支援の具体的な取り組みとしては、以下が有効です。


- 📝 嚥下指導マニュアルの整備と家族への説明:在宅での食形態・介助方法を明文化
- 🔗 かかりつけ医・訪問STへの情報連携:嚥下評価サマリーの送付
- 📞 退院後フォローアップの仕組みづくり:外来嚥下フォローや電話確認の体制整備


「入院中だけ頑張っても意味がない」という現場の声が示すとおり、退院後の継続ケアが嚥下リハビリの最終的な成果を決めます。 病院内の取り組みと地域連携をつなぐ視点が、医療従事者には求められています。 eph.pref.ehime(https://www.eph.pref.ehime.jp/epch/guide/asset/20251209-qi-data-22.pdf)



参考:慶應義塾大学病院による摂食嚥下障害のリハビリテーション解説(患者・医療者向け)

摂食嚥下障害のリハビリテーション - 慶應義塾大学病院 KOMPAS



参考:日本摂食嚥下リハビリテーション学会の相談窓口・専門施設検索

嚥下リハビリ相談窓口 - 一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会






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