あなたの施設で残っている在庫、実は法的に返却できないケースがあります。
2019年にMSDが発売していた抗HIV薬エファビレンツ(ストック名:ストックリン、商品名:エファビレンツ錠)は、2020年3月をもって製造販売を終了しました。販売中止の背景には、より安全性の高い代替薬の普及と、製品需要の低下があります。特に国内では2018年時点で、エドルチグラビルやビクテグラビルへの切り替えが進み、実臨床における使用率は約3割まで減少していました。つまり市場縮小が主な要因です。
しかし驚くべきことに、販売終了直後に一部医療機関では在庫を抱えたまま返却できないケースが相次ぎました。これは、製造販売後の在庫処理に関して「メーカー指定時期を過ぎると返却不可(再償還対象外)」というルールに抵触するためです。薬価差損が月単位で数十万円にも上った施設も報告されています。かなり痛いですね。
この事例により、販売終了を知っていても実際の返却や切り替え手続きを遅らせた施設で損失が発生しました。結論は、医薬品販売停止時の返却スケジュール確認が原則です。
参考リンク(販売終了通達の公的情報)
MSD株式会社:エファビレンツ販売中止に関するお知らせ
後発品は2020年6月以降にいくつかのメーカーから登場しましたが、当初は供給が安定せず、約6か月間は「欠品」登録が続きました。これにより、処方変更時に一時的に同効薬のテンホスビル系薬剤を使うケースが見られました。つまり切り替え対応が乱れたということです。
ジェネリックメーカーの中では特に「日医工」「沢井製薬」「陽進堂」などが供給を継続しましたが、2022年以降は原料輸入規制や需要減少を理由に縮小傾向です。卸では一部規模の小さい薬局に対して出荷ロット制限を設けるところもありました。つまり、安定入手には流通経路の確保が条件です。
今後の在庫確保策として、院外処方箋を用いる施設では事前に調剤薬局と在庫シェアを共有する運用が有効です。SlackやLINE WORKSなどのグループ連絡網を併用すれば、在庫確認の遅れによる処方停止を予防できます。これは使えそうです。
エファビレンツから切り替えられた主要薬剤は、ドリタビン(ドルテグラビル)とビクタルビ配合錠などです。切り替え後に報告されている副作用として、軽度の不眠や倦怠感が約12%で発生しています。副作用は少ないほうです。
逆に、エファビレンツを継続していた患者の一部では、CYP2B6遺伝子変異による高血中濃度が問題になりやすく、眠気や幻覚症状などの中枢神経系副作用が確認されています。つまり代替薬での管理はリスク低減になるわけです。
副作用モニタリングのためには、定期的なAST・ALT測定と、精神症状チェックリスト(Zungスケールなど)が有用とされています。治療選択を見直す指標として、リバーストリアッセイ報告書の確認も推奨されます。
参考リンク(副作用の分析に関する資料)
日本エイズ学会:抗HIV薬副作用まとめ
販売終了後も、電子カルテ上に「エファビレンツ錠」がマスタ登録されたまま更新されていない施設が残っています。そのままでは自動処方オーダーで誤指示が発生しかねません。つまり、薬歴システムの更新が必須です。
2021年の厚労省調査では、販売終了薬剤を「一時保存オーダー」として処理していた医療機関は全体の約18%。これら施設では、誤ってオーダーが実施され薬剤師が無駄な調剤記録を起票するケースが報告されています。仕事のムダですね。
月次棚卸時に販売中止薬を「使用不可」ステータスへ変更する運用を組み込めば、調剤リスクを半減できます。特に電子薬歴ソフトの「レセ電算対応コード更新」を忘れずに行うことが重要です。エファビレンツは既に医薬品マスタコード削除済みです。
長年使い慣れた薬剤が突然なくなると、現場の医師や薬剤師に「とりあえず在庫を使い切る」行動が生まれます。これが問題です。
実際、ある中核病院では在庫70錠を使用し続け、副作用報告が2例確認されたといいます。販売中止薬を継続投与した場合、製薬企業からの安全性責任が外れるリスクもあります。つまり法的リスクがあるということです。
精神的にも、「患者が切り替えを嫌がる」「服薬アドヒアランスが崩れる」などの不安が現場に影響を与えました。代替薬導入前の説明ツールとして日本エイズ学会が提供する「服薬指導パンフ」が役立ちます。医療者の安心感にもつながりますね。
参考リンク(指導用リーフレット)
日本エイズ学会:服薬指導支援資料