正常患者でもカリウム値が0.5mEq/L上昇します。
脱分極性筋弛緩薬は、神経筋接合部の運動終板に存在する筋型ニコチン性アセチルコリン受容体に作用します。代表的な薬剤であるスキサメトニウムは、アセチルコリン2分子が結合した独特な分子構造(di-acetylcholine)を持っており、この構造により受容体への親和性を獲得しています。 kochi-u.ac(https://www.kochi-u.ac.jp/kms/fm_ansth/member/morpdf/20110622.pdf)
受容体レベルでの詳細な作用を見ると、スキサメトニウムは筋型ニコチン性アセチルコリン受容体のα/ε(α/γ)およびα/δ接合部に2分子が同時に結合します。この結合により、イオンチャネルが開放され、ナトリウムイオンが細胞内に流入し、同時にカリウムイオンが細胞外へ流出します。 chigasaki-localtkt(https://chigasaki-localtkt.com/sukisametoniumushikankusuritokuchou/)
アセチルコリンとの決定的な違いは、分解酵素に対する耐性です。通常、神経筋接合部に放出されたアセチルコリンは、真性コリンエステラーゼ(アセチルコリンエステラーゼ)によって速やかに加水分解されますが、スキサメトニウムはこの酵素では分解されません。代わりに血漿コリンエステラーゼ(偽性コリンエステラーゼ)によって分解されるため、神経筋接合部での作用時間が延長されます。 maruishi-pharm.co(https://www.maruishi-pharm.co.jp/medical/knowledge/perioperativedrugs/muscle-relaxants/suxamethonium/)
この分解の遅延により、受容体との結合が持続し、終板の脱分極状態が維持されるということですね。 kochi-u.ac(https://www.kochi-u.ac.jp/kms/fm_ansth/member/morpdf/20110622.pdf)
スキサメトニウム投与直後には、線維束性攣縮(fasciculation)と呼ばれる特徴的な現象が観察されます。これは筋弛緩が起こる前の一過性の細かい筋収縮であり、脱分極性筋弛緩薬に特有の所見です。 anesth.or(https://anesth.or.jp/img/upload/ckeditor/files/2410_05_400_6.pdf)
線維束性攣縮は、受容体へのスキサメトニウム結合によって終板が脱分極し、その刺激が周囲の筋線維に伝播することで発生します。視覚的には、皮膚の下で細かい波打つような筋肉の動きとして観察され、投与後数秒から数十秒程度持続します。 maruishi-pharm.co(https://www.maruishi-pharm.co.jp/medical/knowledge/perioperativedrugs/muscle-relaxants/suxamethonium/)
これが原因で術後筋肉痛が発生しますね。 chigasaki-localtkt(https://chigasaki-localtkt.com/datsubunkyokuseoukijotorinshououyou/)
臨床データによると、スキサメトニウム投与患者の約50%で術後筋肉痛が報告されています。この筋肉痛は、線維束性攣縮による微小な筋線維損傷が原因と考えられており、特に若年者や筋肉量の多い患者で顕著です。予防策として、非脱分極性筋弛緩薬の少量投与(precurarization)が有効ですが、この場合スキサメトニウムの作用発現時間が延長する点に注意が必要です。 anesth.or(https://anesth.or.jp/img/upload/ckeditor/files/2410_05_400_6.pdf)
線維束性攣縮に伴うその他の合併症としては、眼内圧・胃内圧・頭蓋内圧の一時的上昇があります。開放眼球損傷や頭蓋内圧亢進のある患者では、これらの圧上昇が臨床的に問題となる可能性があるため、使用には慎重な判断が求められます。 chigasaki-localtkt(https://chigasaki-localtkt.com/datsubunkyokuseoukijotorinshououyou/)
脱分極性筋弛緩薬の作用様式は、投与方法と総投与量によって2つの異なる遮断パターンを示します。単回投与または短時間の使用では第一相遮断(Phase Iブロック)が、持続投与では第二相遮断(Phase IIブロック)が発現します。 journal.jspn.or(https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=126&year=2024&mag=0&number=12&start=806)
Phase Iブロックは、典型的な脱分極性遮断です。受容体へのスキサメトニウム結合により終板が持続的に脱分極し、その周囲の筋膜が電気的に不活性化されることで筋弛緩が生じます。この状態では、筋弛緩モニターで四連刺激(TOF)を行っても減衰現象(fade)は見られず、強直刺激後の増強(post-tetanic potentiation)も認められません。 chigasaki-localtkt(https://chigasaki-localtkt.com/sukisametoniumushikankusuritokuchou/)
つまり脱分極性の特徴が保たれます。 chigasaki-localtkt(https://chigasaki-localtkt.com/sukisametoniumushikankusuritokuchou/)
しかし、持続投与により一定量を超えると、遮断様式が非脱分極性に類似したPhase IIブロックへと移行します。この移行メカニズムは完全には解明されていませんが、受容体の脱感作や受容体周囲のイオン環境の変化が関与していると考えられています。Phase IIブロックでは、TOF刺激で減衰現象が出現し、強直刺激後増強も認められるようになります。 journal.jspn.or(https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=126&year=2024&mag=0&number=12&start=806)
Phase IIブロックへの移行は臨床上重要な意味を持ちます。通常、脱分極性筋弛緩薬には拮抗薬がありませんが、Phase IIブロック状態ではネオスチグミンなどの抗コリンエステラーゼ薬による拮抗が可能になります。したがって、スキサメトニウムを持続投与する場合は、筋弛緩モニターで遮断パターンを継続的に評価し、Phase IIブロックへの移行を早期に検出することが必須です。 maruishi-pharm.co(https://www.maruishi-pharm.co.jp/medical/knowledge/perioperativedrugs/muscle-relaxants/suxamethonium/)
投与時間が長くなる場合は必ずモニタリングしましょう。 maruishi-pharm.co(https://www.maruishi-pharm.co.jp/medical/knowledge/perioperativedrugs/muscle-relaxants/suxamethonium/)
スキサメトニウムの短時間作用という特性は、血漿コリンエステラーゼ(偽性コリンエステラーゼ)による速やかな代謝に依存しています。静脈内投与されたスキサメトニウムは、血漿中で直ちにこの酵素により加水分解され、コリンとサクシニルモノコリンに分解されます。サクシニルモノコリンはさらにコリンとコハク酸へと分解されます。 pmda.go(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/bookSearch/01/04987060502308)
この代謝速度の速さにより、スキサメトニウムは作用発現が0.8〜1.4分と非常に迅速でありながら、作用持続時間は6〜11分程度と短く抑えられています。成人への通常投与量は1.0〜1.5mg/kg(脱水物として10〜60mg)であり、約30〜60秒で作用が発現します。 kochi-u.ac(https://www.kochi-u.ac.jp/kms/fm_ansth/member/morpdf/20110622.pdf)
臨床的には迅速導入に最適です。 anesth.or(https://anesth.or.jp/img/upload/ckeditor/files/2410_05_400_6.pdf)
しかし、血漿コリンエステラーゼ活性が低下している患者では、スキサメトニウムの代謝が遅延し、作用時間が著しく延長するリスクがあります。最も重要なのは、遺伝性の異型コリンエステラーゼ血症を持つ患者です。これは遺伝的に血漿コリンエステラーゼの構造が変異している疾患で、酵素活性が正常の数%〜50%程度まで低下しています。 maruishi-pharm.co(https://www.maruishi-pharm.co.jp/medical/knowledge/perioperativedrugs/muscle-relaxants/suxamethonium/)
異型コリンエステラーゼ血症の患者にスキサメトニウムを投与すると、通常5〜10分で終了するはずの筋弛緩作用が数時間に及ぶことがあります。この場合、筋弛緩モニターで経過を観察しながら、自然回復を待つか、新鮮凍結血漿の投与により正常な血漿コリンエステラーゼを補充する対応が必要です。 maruishi-pharm.co(https://www.maruishi-pharm.co.jp/medical/knowledge/perioperativedrugs/muscle-relaxants/suxamethonium/)
その他、抗コリンエステラーゼ剤であるジスチグミン臭化物を内服している患者でも、スキサメトニウムの分解が遅延し作用が延長します。これらの患者では、スキサメトニウムの使用を避けるか、使用する場合は作用延長に備えた準備が必要です。 jspn.or(https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/guide_20230920.pdf)
スキサメトニウム投与に伴う高カリウム血症は、最も重篤かつ致死的となりうる副作用です。正常な患者にスキサメトニウムを投与した場合でも、血清カリウム値は一時的に約0.5mEq/L上昇することが知られています。これは筋細胞膜の脱分極に伴い、細胞内から細胞外へカリウムイオンが移動するためです。 anesth.or(https://anesth.or.jp/files/pdf/publication4-6_20180427s.pdf)
健常者では問題になりませんね。 chigasaki-localtkt(https://chigasaki-localtkt.com/datsubunkyokuseoukijotorinshououyou/)
しかし、アセチルコリン受容体のアップレギュレーション(受容体数の増加)が生じている特定の病態では、カリウム放出量が劇的に増加し、心室細動や心停止を引き起こすレベルの高カリウム血症が発生します。受容体アップレギュレーションは、長期の神経筋活動低下によって代償的に受容体が増加する現象であり、以下の病態で認められます。 anesth.or(https://anesth.or.jp/files/pdf/publication4-6_20180427s.pdf)
投与禁忌となる病態は複数あります。脊髄損傷、脊髄腫瘍、麻痺を伴う中枢神経損傷と運動ニューロン疾患の患者では、損傷後数日から数ヶ月間にわたり受容体アップレギュレーションが持続します。広範囲熱傷患者(体表面積の10%以上)でも同様の現象が起こり、受熱後24時間以降から数ヶ月間は高カリウム血症のリスクが高まります。 anesth.or(https://anesth.or.jp/files/pdf/publication4-6_20180427s.pdf)
長期臥床患者や筋ジストロフィー患者も高リスク群です。これらの患者にスキサメトニウムを投与すると、血清カリウム値が10mEq/L以上に上昇し、致死的不整脈を誘発する可能性があります。したがって、これらの病態が疑われる患者では、スキサメトニウムの使用は絶対禁忌となります。 anesth.or(https://anesth.or.jp/files/pdf/publication4-6_20180427s.pdf)
緊急時でも非脱分極性筋弛緩薬のロクロニウム高用量投与(1.0〜1.2mg/kg)を選択し、必要に応じてスガマデクスによる拮抗を準備することが推奨されます。現在では、迅速導入においてもロクロニウムが第一選択となるケースが増えており、スキサメトニウムの使用は主に電気けいれん療法(ECT)や抜管後の喉頭痙攣時に限定されつつあります。 anesth.or(https://anesth.or.jp/img/upload/ckeditor/files/2410_05_400_6.pdf)
痛いリスクは避けるべきですね。
高カリウム血症の早期発見には、心電図モニタリングが有用です。T波の増高・尖鋭化、QRS幅の拡大、PR間隔の延長といった典型的な心電図変化を認めた場合は、直ちにカルシウム製剤の投与、インスリン・グルコース療法、過換気などの緊急対応を開始する必要があります。