B細胞は「抗体を作るだけ」と思っていませんか?実は、制御性B細胞はIL-10を産生して炎症を抑制するため、活性化を抑えるほど自己免疫疾患が悪化するケースがあります。
成熟B細胞は細胞表面にIgMとIgDを発現しており、抗原と結合すると活性化・増殖のシグナルが入ります。 ただし、多くの抗原に応答するには「ヘルパーT細胞からのサポート」が必要です。 official.rikanenpyo(https://official.rikanenpyo.jp/posts/6187)
T細胞依存性の活性化では、ヘルパーT細胞(Th)がCD40L(CD154)をB細胞のCD40に結合させ、その後サイトカインを放出することで本格的な活性化が始まります。 CD154は活性化の初期段階を担い、ICOS分子はその後のフェーズで機能します。 つまり「接触」と「サイトカイン」の2段階が条件です。 med.kurume-u.ac(http://www.med.kurume-u.ac.jp/med/immun/20171102-1.pdf)
産生されるサイトカインには、B細胞の増殖を促すものと、形質細胞への分化を促すものがあり、役割が明確に分かれています。 どのクラスの抗体(IgGかIgAかIgEか)が産生されるかも、B細胞に作用するサイトカインの種類によって決まります。 B細胞活性化は単純な「スイッチオン」ではなく、多重的な制御によって成り立っています。 official.rikanenpyo(https://official.rikanenpyo.jp/posts/6187)
| サイトカイン | 主な産生細胞 | B細胞への主な作用 |
|---|---|---|
| IL-4 | Th2細胞、肥満細胞 | 増殖促進・IgEへのクラススイッチ誘導 |
| IL-5 | Th2細胞 | IgA分泌の促進 |
| IL-21 | Th細胞 | 形質細胞への分化促進・IgEクラススイッチ抑制 |
| IL-10 | Breg、Th2細胞 | Th1サイトカイン産生阻害・抗炎症 |
| BAFF | マクロファージ、DC | 未熟B細胞の生存・成熟促進 |
| APRIL | マクロファージ、DC | 形質細胞への分化・抗体産生関与 |
参考:B細胞表面分子とサイトカインの連携についての詳細な一覧
サイトカインの主な機能およびファミリー|コスモ・バイオ株式会社
BAFFとAPRILはTNFスーパーファミリーに属するサイトカインで、B細胞の生存・成熟・分化において中心的な役割を果たします。 BAFFはそれぞれの受容体(BAFF-R・BCMA・TACI)に結合することで、未熟B細胞の生存シグナルを送ります。 rheumatology-biboroku.blogspot(http://rheumatology-biboroku.blogspot.com/2018/01/baff-april-systemsle.html)
このシステムは3つの受容体が関与しており、役割が異なります。 rheumatology-biboroku.blogspot(http://rheumatology-biboroku.blogspot.com/2018/01/baff-april-systemsle.html)
- BAFF-R(BR3):未熟B細胞の生存と成熟を担う
- BCMA:形質細胞の生存維持に関与し、多発性骨髄腫の創薬標的として注目 funakoshi.co(https://www.funakoshi.co.jp/contents/69673)
- TACI:T細胞非依存性のB細胞活性化とクラススイッチを担う
意外なことに、APRILはプロテオグリカンへの結合によってオリゴマー化し、その後にTACIおよびBCMA経由で活性化・遊走シグナルを誘導します。 単純な可溶性サイトカインとしてだけ機能するわけではありません。そこが重要なポイントです。 bibgraph.hpcr(https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/15851487?click_by=rel_abst)
SLE(全身性エリテマトーデス)では、BAFF/APRILシステムがB細胞のinnate activationに深く関与していることが明らかになっており、 ベリムマブはBAFFを標的とする抗体製剤として臨床応用されています。 rheumatology-biboroku.blogspot(http://rheumatology-biboroku.blogspot.com/2018/01/baff-april-systemsle.html)
参考:SLEとBAFF/APRILシステムの詳細な病態
BAFF-APRIL system:SLEにおけるベリムマブの作用機序|リウマチ備忘録
B細胞が産生する抗体クラスが決まるのは「どのサイトカインが作用するか」によります。これが臨床的に非常に重要な点です。 official.rikanenpyo(https://official.rikanenpyo.jp/posts/6187)
一方、IL-21はIgEクラススイッチを抑制する方向に働くサイトカインで、IL-4とは逆の作用を持ちます。 さらにIFN-γも同様にIgEスイッチを抑制します。 つまりIL-4だけが作用すればIgEが増える、という単純な構図ではありません。 hs.kumamoto-u.ac(https://www.hs.kumamoto-u.ac.jp/hoken/docs/kiyo-no13_2017_0331.pdf)
IL-5はB細胞に働きかけてIgAを分泌させる役割を担います。 消化管や気道粘膜での防御免疫においてIL-5が貢献している理由はここにあります。サイトカインごとに「どのIgクラスに誘導するか」を整理しておくことが基本です。 orthomedico(https://www.orthomedico.jp/news-release/e-mail-magazine/mm-250717.html)
| サイトカイン | クラススイッチへの作用 | 誘導されるIg |
|---|---|---|
| IL-4 | 促進 | IgE(IgG1を経由する場合もあり) |
| IL-13 | 促進 | IgE |
| IL-5 | 促進 | IgA |
| IL-21 | 抑制(IgEに対して) | IgGなど |
| IFN-γ | 抑制(IgEに対して) | IgGなど |
参考:IgEクラススイッチの分子機構について詳しく解説
「B細胞=免疫を活性化する」というのが一般的なイメージです。しかし、制御性B細胞(Breg)はIL-10を産生することで免疫応答を逆に抑制します。 これは臨床で見落とされやすいポイントです。 leading.lifesciencedb(http://leading.lifesciencedb.jp/5-e002)
多発性硬化症に類似する脳脊髄炎モデルでは、プラズマブラストとよばれるB細胞集団がIL-10を特異的に産生し、樹状細胞の機能を阻害することで炎症の悪化を抑制することが確認されています。 ヒトの多発性硬化症患者ではプラズマブラストによるIL-10産生能の低下が病因に関与する可能性も示唆されています。 これは治療標的として非常に有望です。 first.lifesciencedb(http://first.lifesciencedb.jp/archives/9615)
重症筋無力症(MG)においても、重症例ほどBAFFが高く自己抗体産生が増加する一方、IL-10産生Bregが自己抗体産生を制御する可能性が示されており、 IL-10産生を促進させる治療が有用との報告があります。 Bregは単なる傍観者ではありません。 kaken.nii.ac(https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-24590215/24590215seika.pdf)
参考:IL-10産生プラズマブラストと自己免疫疾患抑制の研究
インターロイキン10を産生するプラズマブラストは自己免疫疾患における炎症反応を抑制する|ライフサイエンス新着論文レビュー
サイトカインがB細胞表面の受容体に結合すると、受容体の二量体形成が起こり、受容体に結合しているJAKキナーゼが活性化されます。 続いてSTAT因子へシグナルが伝わり、細胞増殖・分化・生存の遺伝子発現が制御されます。 cellsignal(https://www.cellsignal.jp/science-resources/overview-of-immunology)
このJak-STATシグナル伝達経路は、サイトカイン受容体の種類によらず共通で使われる「共通インフラ」のようなしくみです。 この特性を逆手に取り、JAK阻害薬でサイトカインシグナルを広く抑制するという治療戦略が生まれました。これは使えそうです。 costep.open-ed.hokudai.ac(https://costep.open-ed.hokudai.ac.jp/news/30640)
実際、JAK阻害薬(トファシチニブ・バリシチニブなど)はリウマチ性疾患において、IL-4・IL-6・IL-21など複数のB細胞活性化サイトカインシグナルを同時にブロックする効果を持ちます。 単一サイトカインを標的にする生物学的製剤とは異なる広範な抑制が可能です。 一方で、Bregを介したIL-10産生まで抑制してしまうリスクも理論上は存在するため、適応選択には注意が必要です。 costep.open-ed.hokudai.ac(https://costep.open-ed.hokudai.ac.jp/news/30640)
BCMAを標的とした治療は多発性骨髄腫で特に進歩しており、 抗BCMA抗体や抗体薬物複合体(ADC)が承認・臨床試験段階にあります。BAFFとAPRILが共にBCMAに結合するため、このシステムをブロックする戦略が血液腫瘍と自己免疫疾患の双方で模索されています。 B細胞活性化サイトカイン研究は、基礎から臨床まで切れ目なくつながっています。 funakoshi.co(https://www.funakoshi.co.jp/contents/69673)
参考:JAK-STATシグナルとサイトカイン受容体の詳細
免疫学の概要(B細胞受容体シグナル伝達)|Cell Signaling Technology Japan
参考:制御性B細胞と自己免疫疾患の臨床的意義