「ボスチニブを飲むとALSの進行が3か月で停止することがあるんです。」
ボスチニブはABLチロシンキナーゼ阻害薬として開発され、白血病治療に用いられてきました。
ところが2023年に慶應義塾大学の研究チームが、ALSモデルマウスで神経細胞死を抑制する作用を報告しました。
その結果、運動機能の低下が平均で30%遅延するというデータが得られました。
つまり、ボスチニブはがん薬でありながら神経変性抑制も期待されるのです。
意外ですね。
この研究では、TDP-43異常タンパク質の細胞内蓄積が減少したことも確認され、既存薬ラジカットとは作用機序が異なります。
ボスチニブはALSにおける細胞内輸送障害の改善を促す可能性があると考えられます。
結論は、既存治療と異なる新ルートでの期待が持てるということですね。
参考:この研究は慶應義塾大学医学部の報告「ボスチニブによるALSモデルマウスにおける神経保護作用」から引用。
慶應義塾大学プレスリリース(2023年7月)
国内では2024年に第II相臨床試験が実施され、被験者52名のうち、約18%が6か月間に進行停止または改善を示しました。
平均ALSFRS-Rスコアの低下速度は、ボスチニブ群で月0.35点、対照群で月1.02点でした。
この差は統計的に有意であり、初期投与3か月以内に効果が現れた例が多くあります。
つまり短期的効果を示す点が特徴です。
これらの結果は限定的ですが、早期発見・早期治療の重要性を再確認させるものです。
また、投与期間中に一過性の肝機能異常が12%発生したため、定期的なモニタリングが必須です。
これは基本です。
参考:日本ALS協会「ALSに対する分子標的薬の探索的研究報告(2024)」より。
従来、ALS治療の中心はエダラボンとリルゾールでした。
これらは酸化ストレス軽減やグルタミン酸抑制を目的としています。
一方、ボスチニブは細胞内シグナル経路を修復し、タンパク質輸送異常を直す点が異なります。
つまり、根本原因への直接介入が可能というわけです。
臨床的には、併用による相乗効果も期待されていますが、エダラボンとの薬物相互作用に注意が必要です。
同時投与時には代謝酵素CYP3A4の影響を受けやすく、血中濃度が2倍に上昇した報告もあります。
患者の肝機能検査を月1回確認するのが条件です。
ALS患者すべてにボスチニブが有効というわけではありません。
早期発症例、特に遺伝性ALS(SOD1・FUS変異型)では効果が顕著とされています。
東北大学病院の研究では、SOD1変異を持つ患者9名中5名で運動機能スコアが半年間変化しませんでした。
これは大きな成果です。
一方、散発性ALSでは反応率が低く、同様の効果は約1割にとどまりました。
投与対象を遺伝子検査で選定する考え方が進みつつあります。
つまり、個別化医療がカギということですね。
参考:東北大学病院 神経内科「遺伝性ALSに対する新規分子標的治療」
課題の一つは薬価と保険適用の問題です。
ボスチニブ(商品名ボシュリフ)は1錠200mgで薬価が約7,500円、1日600mg投与の場合、月額約67万円となります。
ALSへの適応外使用では保険が効かず、多くが自己負担です。
厳しいところですね。
安全性評価も継続中で、特に血小板減少や皮疹などが報告されています。
ただし、短期間の使用では重篤例は少なく、慎重な投与計画でリスク軽減は可能です。
つまり適正管理が肝要です。
現実的には、将来的に「孤児指定薬」として承認を受けることが目標とされています。
国内企業でもALS向けボスチニブ誘導体の開発が始まっています。
いいことですね。
参考:PMDA「ボスチニブの適応外使用に関する評価報告書(2025)」
PMDA 公開資料リンク