アプロチニン入り採血管を使えば、常に正確な検査値が出ると思っていませんか?実は、採血後180分以内に遠心分離すればアプロチニンなしの管でも代用できるケースがあります。
アプロチニンは、膵臓由来のセリンプロテアーゼ阻害剤です。血液中に存在するプロテアーゼはペプチドホルモンを急速に分解するため、BNPやHANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)、グルカゴンといった不安定なホルモンの測定には、この阻害剤があらかじめ添加された専用採血管が必要になります。 lab.toho-u.ac(https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/omori/kensa/column2/2025/column_128.html)
つまり、ホルモンを「生きたまま」ラボへ届けるための保護剤です。
BDバキュテイナ®アプロチニン入り採血管を例にとると、添加剤の組成はEDTA-3K溶液 1.6mg/mL血液+アプロチニン50KIU/mL血液となっています。 転倒混和は8〜10回、遠心条件は1,300×g未満、遠心時間は10分が推奨されています。 この条件を守ることが、正確な測定値を得る第一歩です。 jaclas.or(https://jaclas.or.jp/Product/index?id=60133)
アプロチニンはもともと手術時の止血補助薬として開発された薬剤でもあり、線溶反応(フィブリン溶解)を阻害する作用を持ちます。 採血管への応用では、その強力なプロテアーゼ阻害能力を検体保護に利用しています。これは意外と知られていない背景です。 jsth(https://www.jsth.org/publications/pdf/tokusyu/20_3.278.2009.pdf)
アプロチニン入り採血管が必須となる検査は、主にペプチドホルモン系の項目に集中しています。代表的なものを以下に示します。 crc-group.co(https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/46.html)
一方、BNPと混同されやすいNT-proBNPは状況が異なります。NT-proBNPは血清または血漿で測定でき、採血後の保存安定性も良好なため、他の生化学項目と同一採血管での測定・追加検査が可能です。 アプロチニン専用管は不要というのが大きな違いです。 crc-group.co(https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/46.html)
| 検査項目 | 採血管の種類 | 採血後の安定性 | 保存条件 |
|---|---|---|---|
| ANP/HANP | EDTA+アプロチニン入り | 不安定 | 凍結保存 |
| BNP | EDTA+アプロチニン入り | 冷蔵で24時間 | 凍結保存 |
| NT-proBNP | 血清/血漿(汎用管可) | 室温/冷蔵で24時間 | 冷蔵3日間 |
| グルカゴン | EDTA-2Na+アプロチニン入り | 低温で短時間 | 凍結保存 |
crc-group.co(https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/46.html)
採血後の操作手順を誤ると、検査値に直接影響します。これは原則です。
まず採血直後、採血管を8〜10回転倒混和してください。 泡立てないよう静かに混和するのがポイントです。 泡立ちが生じると溶血の原因となり、溶血検体はグルカゴン測定で低値を示すリスクがあります。 kml-net.co(https://www.kml-net.co.jp/common/img/pdf/2025-2026.pdf)
次に温度管理です。HANP・ANP系の検査では、採血後すぐに低温(4℃)で血漿分離を行ってください。 採血後すぐに検査ができない場合でも、遠心分離後の冷蔵静置であれば180分以内が目安となります。 congress.jamt.or(http://congress.jamt.or.jp/j72/pdf/general/0128.pdf)
遠心条件は1,300×g未満・10分間が基本です。 過剰な遠心力は採血管内のゲルや細胞成分に影響を与える可能性があります。特に血漿分離後は、上清をマイクロチューブなどに速やかに移し、指定の保存方法で保管します。 asset.fujifilm(https://asset.fujifilm.com/master/jp/files/2026-02/65272d70fdae86f8966067a06d0018e3/inspection-guide.pdf)
アプロチニン入り採血管が不足した際、アプロチニンなしの管で代用できるか。これは現場でよく問われる問題です。
東京西徳洲会病院が行った研究によると、HANP測定において、採血後速やかに遠心分離を行い、遠心分離後(血漿静置)180分以内であれば、アプロチニン入りとアプロチニンなしのHANP減少率に統計的有意差は認められませんでした(p=0.68)。 アプロチニン入り管の遠心後減少率5%に対し、なし管では7%でした。 congress.jamt.or(http://congress.jamt.or.jp/j72/pdf/general/0128.pdf)
意外ですね。
代用の可否を判断する場合は、以下の条件を確認してください。
グルカゴン測定は近年、従来のラジオイムノアッセイ(RIA)法から新しい測定法へと移行が進んでいます。この移行期に、アプロチニン入り採血管での保存安定性を改めて検証する動きが出ています。 webview.isho(https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1542201328)
臨床検査誌(61巻7号、2017年)に掲載された研究では、新規グルカゴン検査法の導入を契機に、従来のアプロチニン入り採血管での保存安定性を検討しました。 全血のまま室温1時間、続けて冷蔵6時間の計7時間以内という保存条件での安定性が確認されています。 webview.isho(https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1542201328)
これが見落とされやすいポイントです。
測定法が変わると、これまで「問題ない」と思われていた採血管・保存条件が再評価の対象になります。医療機関で新しい自動分析装置を導入する際や、委託検査先を変更する際には、アプロチニン採血管の種類・ロット・保存条件が従来と変わっていないかを必ず確認することが重要です。
なお、BMLの検査案内では専用容器(B-15:アプロチニン入りEDTA-2Na管)への採血後、直ちに低温処理と指定されています。 機関ごとに細部の規定が異なるため、依頼先の「検査案内」を最新版で確認する習慣が不可欠です。検査案内の最新版入手は各検査センターの公式サイトから可能です。 uwb01.bml.co(https://uwb01.bml.co.jp/kensa/pdf/BML2018-16.pdf)
参考:アプロチニン採血管を使用したBNP・HANPの検体安定性に関する研究(東邦大学大森病院 臨床検査部)
心不全のバイオマーカー(BNP・ANPとアプロチニン管の関係)|東邦大学医療センター大森病院
参考:HANP測定におけるアプロチニンの有無による測定値への影響(学会発表資料)
HANP測定におけるアプロチニンの有無による測定値に及ぼす影響についての検討(日本臨床衛生検査技師会)
参考:ANP・BNP・NT-proBNPの採血管・保存条件の比較(CRCグループQ&A)
ANPとBNPの使い分け・NT-proBNPとの違い|CRCグループ
![]()
医療機器 採血検査用 ベノジェクトII 真空採血管 トロンビ、+アプロチニン、蛇毒入管 紺 1mL採血 100本入 VP-FD051K テルモ