腎障害患者でも用量調整なしで使えますが、それはなぜか知っていますか?
アニデュラファンギン(anidulafungin)は、エキノキャンディン系に属する半合成リポペプチド系抗真菌薬です 。米国では2006年2月にFDAが承認し、欧米を中心に84カ国以上で先行して使用されてきました 。 pmda.go(https://www.pmda.go.jp/drugs/2012/P201200014/170050000_22400AMX00036_A100_1.pdf)
日本での承認はその後となりましたが、販売名はエラキシス®点滴静注用として上市されています 。もともとラクオリア創薬が日本における権利を取得し、国内開発・導入が進められた経緯があります 。 kida-clinic(https://kida-clinic.jp/blog/104781)
日本でエキノキャンディン系がまず市場に出たのはミカファンギン(ファンガード®、2002年承認)であり、アニデュラファンギンはその後に続く形で国内承認を受けました 。つまり国内では"後発のエキノキャンディン"という立ち位置です。 pulmonary.exblog(https://pulmonary.exblog.jp/14238919/)
| 一般名 | 販売名(日本) | 承認年(日本) |
|---|---|---|
| ミカファンギン | ファンガード® | 2002年 |
| アニデュラファンギン | エラキシス® | 承認済(欧米は2006年) |
| カスポファンギン | カンサイダス® | 2012年 |
3剤とも同じエキノキャンディン系です。それぞれ適応や薬価が異なります。
日本における主な適応症は、カンジダ血症を含む侵襲性カンジダ症(腹腔内膿瘍・腹膜炎を含む)と食道カンジダ症の2つです 。侵襲性カンジダ症はICUや血液疾患患者に多く、適切な初期治療が予後を左右します。 bibgraph.hpcr(https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/17394608)
侵襲性カンジダ感染症全体の原因菌種のうち、C. albicansが40〜60%と最多を占めます 。C. glabrataやC. kruseiなどアゾール耐性傾向を持つ菌種へのカバーも必要な場面では、エキノキャンディン系の出番が増えます。 kameda(https://www.kameda.com/pr/infectious_disease/post_64.html)
食道カンジダ症はHIV感染や免疫抑制状態の患者で発症リスクが高く、経口投与が困難な症例ではアニデュラファンギンを含む静注用抗真菌薬が選択肢になります 。静注専用という制約があります。 kida-clinic(https://kida-clinic.jp/blog/104781)
適応を外れた使用(例:侵襲性アスペルギルス症の単独治療)には注意が必要です 。 kameda(https://www.kameda.com/pr/infectious_disease/post_64.html)
日本での成人への用量設定はグローバルスタンダードに準じており、初日に200mg(ローディング投与)、2日目以降は100mg/日を1日1回点滴静注するのが侵襲性カンジダ症への基本です 。食道カンジダ症では初日100mg、維持50mg/日となります。 labeling.pfizer(https://labeling.pfizer.com/ShowLabeling.aspx?id=15037)
ローディング投与を行う理由は明確です。アニデュラファンギンの消失半減期は約40〜50時間と非常に長く、通常投与だけでは定常状態の血中濃度に達するのに数日かかるためです。初日に2倍量を投与することで、速やかに有効濃度を確保できます。
点滴速度は1.1mg/分を超えないよう設定することが求められています 。速度が速すぎるとヒスタミン遊離反応(潮紅・蕁麻疹など)が起きるリスクがあります。これは臨床でよく見落とされる注意点です。 mims(https://www.mims.com/singapore/drug/info/anidulafungin?mtype=generic)
アニデュラファンギン最大の特徴の一つが、CYP酵素系をほとんど介さない代謝です 。肝臓でのCYP450による代謝がほぼないため、CYP3A4阻害薬や誘導薬(免疫抑制薬・抗HIV薬・抗てんかん薬など)との相互作用が生じにくいです。 bibgraph.hpcr(https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/17394608)
これが条件です。多剤併用が避けられない血液腫瘍患者や臓器移植後患者では、薬物相互作用の少なさは治療選択における大きなアドバンテージになります。カルシニューリン阻害薬(タクロリムス・シクロスポリン)を併用している患者でも、アゾール系に比べて安心して使えます。
さらに腎排泄もほぼ行われないため、腎機能低下患者(透析患者含む)でも原則として用量調整が不要です 。肝機能障害患者でも同様に用量変更なしで投与できます。つまり臓器機能障害に対して「調整要らずの薬」という整理ができます。 bibgraph.hpcr(https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/17394608)
PMDAによるカスポファンギン審議報告書(エキノキャンディン系各剤のPKプロファイル・日本承認経緯の比較参考)
日本ではミカファンギンが先行して長年使われてきたため、「エキノキャンディン=ミカファンギン」という認識が現場で根強い傾向があります。しかし両者には臨床上重要な差異があります。
| 項目 | アニデュラファンギン | ミカファンギン |
|---|---|---|
| 消失半減期 | 約40〜50時間(長い) | 約15時間(短め) |
| 腎排泄 | ほぼなし | ほぼなし |
| CYP代謝 | 関与なし | 軽微に関与 |
| 適応(日本) | 侵襲性カンジダ症・食道カンジダ症 | アスペルギルス症・カンジダ症(より広範) |
| C. parapsilosis感受性 | 比較的問題になりやすい | 効果が低い可能性あり |
C. parapsilosisに関しては、グローバルサーベイランスのデータによればアニデュラファンギンへの耐性率が7.5%と報告されており、3剤の中で耐性率が相対的に高い傾向があります 。耐性率に注意が必要です。 eiken.co(https://www.eiken.co.jp/uploads/modern_media/literature/MM1209_01.pdf)
一方でミカファンギンには「アスペルギルス症への適応もある」という日本国内での差があります 。侵襲性アスペルギルス症が疑われる場合、アニデュラファンギン単剤は適切でなく、ボリコナゾールなどアゾール系との組み合わせが優先される点を押さえておく必要があります。 kameda(https://www.kameda.com/pr/infectious_disease/post_64.html)
亀田総合病院 感染症内科「抗真菌薬overview」(菌種別の選択薬・エキノキャンディン系の使い分けが整理された実践的な参考資料)
栄研化学「病原カンジダ菌種の多様化とその医真菌学的インパクト」(C. parapsilosisのキャンディン耐性率7.5%を含む菌種別耐性データの出典)