GG5(Grade Group 5)の前立腺アデノカルシノーマは、Gleason score 9〜10に相当する最高悪性度の腺癌です。 しかし「最高悪性度=必ず全身治療のみ」という思い込みは、実は治療の機会損失につながる可能性があります。 pubmed.ncbi.nlm.nih(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27993581/)
グリーソン分類(Gleason grading)は、前立腺腺癌(アデノカルシノーマ)の組織形態を1〜5のグレードで評価し、最も面積の大きいパターン(primary grade)と2番目に多いパターン(secondary grade)を合計してスコア化します。 Grade Group(GG)はこのスコアをさらに5段階に再分類したものです。GG1がGS 3+3=6(最低悪性度)、GG5がGS 9および10(最高悪性度)に対応します。 zytiga(https://www.zytiga.jp/pts/prostate_cancer/classification.html)
Grade Group分類は従来のグリーソンスコアより予後予測精度が高いとされています。特にGG5は他グループと明確に異なる生物学的挙動を示します。これが基本です。
| Grade Group | Gleason Score | リスク分類 |
|---|---|---|
| GG1 | 3+3=6 | 低リスク |
| GG2 | 3+4=7 | 中間リスク(低) |
| GG3 | 4+3=7 | 中間リスク(高) |
| GG4 | 4+4=8 | 高リスク |
| GG5 | 9〜10 | 超高リスク |
なお、GS 4+4=8であっても、<5%程度のグリーソンパターン5(tertiary GP5)が存在する場合、そのリスクはGG5相当とみなすべきとする報告があります。 この点は病理レポートを読む際に見落とされやすいポイントです。意外ですね。 pure.johnshopkins(https://pure.johnshopkins.edu/en/publications/the-effect-of-limited-tertiary-gleason-pattern-5-on-the-new-prost)
同じGG5でもGS 5+5とGS 4+5(またはGS 5+4)では、術後の腫瘍学的転帰に差があることが近年注目されています。 これは重要な臨床的知見です。 academia.carenet(https://academia.carenet.com/share/news/b93515f7-c671-4344-b82d-28a1eabddc24)
根治的前立腺摘除術(radical prostatectomy; RP)後の検討では、GP5の形態的亜型(シート状、単細胞浸潤、小腺管など)の数が多いほど生化学的再発(BCR)リスクが有意に上昇します(ハザード比1.23、95%CI 1.02–1.49)。 一方、GP5の占める面積(%GP5)自体はBCRリスクと有意な相関を示しませんでした(HR 0.99)。 つまり「どれだけパターン5が多いか」より「どんな形態のパターン5か」の方が予後に関連するということです。 pubmed.ncbi.nlm.nih(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28975495/)
病理報告書にこれらの形態コメントが記載されているか確認することが、治療方針決定における精度向上につながります。これは使えそうです。
GS 9〜10のアデノカルシノーマ グループ5に対する最適な根治治療は何か。これは長年の臨床的課題でした。JAMA(2018年)掲載のKishan AUらの研究(多施設後方視的研究)は、この問いに重要な示唆を与えています。 jastro.or(https://www.jastro.or.jp/medicalpersonnel/journal/journal-club/9-10.html)
同研究では根治的前立腺摘除術(RP)、外照射単独(EBRT)、外照射+小線源療法(EBRT+BT)の3群を比較しました。
jastro.or(https://www.jastro.or.jp/medicalpersonnel/journal/journal-club/9-10.html)
jastro.or(https://www.jastro.or.jp/medicalpersonnel/journal/journal-club/9-10.html)
手術単独が標準とされてきたGG5において、外照射+小線源療法という局所治療強化戦略が予後を3倍近く改善する可能性があるのです。厳しいところですね。
EBRT+BT群のEQD2中央値は92Gy(EBRT単独は74Gy)、ADTの中央値は12か月でした。 線量強度が高いほど局所制御が改善し、それが遠隔転移の抑制につながったと考えられています。 jastro.or(https://www.jastro.or.jp/medicalpersonnel/journal/journal-club/9-10.html)
参考:GS9-10前立腺癌の根治治療比較(JAMA 2018)に関するJASTROのジャーナルクラブ解説
https://www.jastro.or.jp/medicalpersonnel/journal/journal-club/9-10.html
「PSAが高いほど悪性度が高い」というのは医療従事者の間でも広く共有された認識です。しかしGG5においてはこれが必ずしも成立しません。これが盲点です。
Low-PSA(PSA低値)かつHigh-grade(高悪性度)の前立腺癌は、予後不良となるケースが報告されています。 PSA産生能を持たない、または低い腫瘍細胞が増殖した場合、PSA値は低いままでも組織学的悪性度は最高値を示します。ステージ分類においても、GG5ではPSA値は「任意のレベル」として扱われます。 medicalnote-expert(https://medicalnote-expert.jp/content/previews/8a625e72-d008-4ea8-b736-3a22e807e127)
GG5の疑いがある場合、PSA単独での経過観察判断は危険です。これは注意が必要です。
特にPSA密度(PSA density)0.15以下の場合でも組織学的にGG5となるケースがあり、超低リスク基準を満たさないことの確認が必要です。 shinmatsudo-hospital(https://www.shinmatsudo-hospital.jp/features/cancer-treatment/prostate/stage/)
参考:前立腺がんのリスク分類と悪性度・GG分類の詳細(大阪国際がんセンター)
https://oici.jp/hospital/utility/cancer-type/zenritsusengan/
病理報告書の読解は治療方針の根幹です。特にGG5周辺では、「tertiary(第3の)グリーソンパターン5」の存在が見落とされやすく、これが臨床的に重大な意味を持ちます。 pure.johnshopkins(https://pure.johnshopkins.edu/en/publications/the-effect-of-limited-tertiary-gleason-pattern-5-on-the-new-prost)
結論は明確です。GS 4+4=8(GG4)の生検結果であっても、病理報告書に「tertiary Gleason pattern 5(<5%)」の記載があれば、そのリスクはGG5相当として扱うべきです。 John Hopkins大学のグループはGrade Group 2+や3+といった追加コメントを設けることを提唱しています。 pure.johnshopkins(https://pure.johnshopkins.edu/en/publications/the-effect-of-limited-tertiary-gleason-pattern-5-on-the-new-prost)
GS 8の患者がGG4として管理されていても、実際はGG5相当のリスクを持っている可能性があります。これは見逃せない事実です。
リスク分類の誤認は、アンドロゲン除去療法(ADT)の導入タイミングや、根治的前立腺摘除術後の補助放射線治療の判断に直接影響します。 特に高リスク・超高リスクの境界線上にある症例では、多職種チームでの病理報告の再確認プロセスを設けることが患者アウトカム改善に寄与します。 uro.med.tohoku.ac(http://www.uro.med.tohoku.ac.jp/patient_info/ic/p_c_04.html)
参考:前立腺癌診療ガイドライン2023(日本泌尿器科学会)—nmCRPC・mCSPCへの新規ARSIの位置づけを含む
https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/23_prostatic_cancer_2023.pdf